鈴木:最初、「おにぎりを売る」と言ったら、みんな反対した。「おにぎりやお弁当は家庭でつくるものだから、コンビニでは売れない」って。最初は1店舗で2、3個しか売れなかったし、常温の棚に置いて売ってたら保健所から「冷蔵庫に並べなさい」と言われてね。旅館に行くと小さな金庫があるでしょう。

林:はい、あります。

鈴木:あれと同じ大きさの冷蔵庫をつくった。そこに入れるぐらいしか売れなかったんだ。

林:それがいまや、お米の消費の何%かをコンビニが……。

鈴木:2.5%がセブン−イレブン。しかも、うちはどこよりもいいお米を使ってる。ごはんを炊くお釜の大きさまで研究して、いまのごはんになったんです。

林:会長は毎日会社で試食なさるそうですね。

鈴木:お客さんでも来ない限り、お昼は毎日試食するし、日曜日も必ず家の近くのセブン−イレブンへ行って商品を買って食べてます。

林:お店に行かれたときには、店員さんに気がついたことをおっしゃったりするんですか。

鈴木 知ってる人がいれば「ご苦労さん」と声はかけるけど、店には言わない。昔、店で買って食べたら味がよくなかったんで、会社に電話して「この商品、全国の店で発売停止にしろ」と言ってやめさせたことがあるんだ。

林:まあ、ほんとですか。

鈴木:このあいだも、その日から発売されるという中華麺を食べたら、おいしくない。すごい数の新商品が出るから、発売前に試食できないものもあるわけです。それで「これは発売停止だ」と言ったら、「もう店に入れてます。全部廃棄したら6千万の損失です」と言う。それでも「いいじゃないか。宣伝費には1億、2億を使ってるんだ。おいしくない商品を出したら、悪い宣伝をしてるのと同じだ。確かに6千万は大きいが、いま発売停止にしたほうが、結果として安上がりだろう」と言って廃棄させた。それぐらい厳しくいかないとね。

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋