鈴木敏文さん(撮影/写真部・大嶋千尋)
鈴木敏文さん(撮影/写真部・大嶋千尋)
林真理子さん(撮影/写真部・大嶋千尋)
林真理子さん(撮影/写真部・大嶋千尋)

 コンビニから始まり、スーパー、百貨店、レストラン、さらには銀行、ITサービス……。流通業界の枠を超えて成長を続ける巨大グループのカリスマ経営者、鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO。作家の林真理子さんと対談を行い、反対されつづけてきた今までの会社人生を振り返った。

*  *  *

林:先ほど伺ったら、セブン-イレブン、いま全国で1万7千店だそうですね。

鈴木:世界では5万4千店。始めたときは、まさかこんなに増えるとは思わなかった。最初に僕が「コンビニをやる」と言ったときは、みんな大反対だったんです。あれだけ反対されて、よくやったもんだと思うよ(笑)。

林:1号店のオープンが1974年で、豊洲(東京都)の酒屋さんがセブン-イレブンになったわけですね。その方、お金持ちになられたそうですね。

鈴木:人の財産のこと言っては失礼だから何とも言えないけど、大成功されましたよ。

林:出店を決めるときには、昔からのお得意さんを持っていて、夫婦仲がいいところを選ぶと、何かで読んだことがあります。

鈴木:とくに奥さんが商売熱心なところは、大概うまくいきますよ。

林:うちの近所にあるセブン-イレブンも、奥さんがキビキビしていて愛想がいいから、つい行ってしまうんです。

鈴木:コンビニって、一つの家業ですからね。セブン-イレブン1店舗でパートさんやアルバイトさんなど、だいたい22、23人の従業員を雇ってる。そういうマネジメントを上手にやるには、やっぱり奥さんが大事。奥さんがしっかりしてるとその店は繁盛します。

林:セブン-イレブンができたことで、この国の流通システムが大きく変わったと言われていますが。

鈴木:たとえば牛乳を運ぶにしても、最初は森永・明治・雪印の各メーカーが、「自社の商品は自社の車でしか運ばない」と言っていた。だから1日に60、70台の配送車が来ないと全部の商品がそろわなくて、恐ろしく非効率だったんです。それを苦労して説得して、1台の車で各メーカーの商品を配送する共同配送という形にした。いまは1日に8台か9台ぐらいで全部の商品がそろうような形になってるんです。相当流通革新をしてきたと思いますよ。僕は小売業に入ってからも、自分でものを仕入れたり売ったりしたことがない。どう改革しようかとか、そんなことばっかり考えてましたね。

林:商品もすごく進化してますよね。たとえばおにぎりはすごいです。

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