セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO鈴木敏文(すずき・としふみ)1932年、長野県生まれ。56年中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現・トーハン)を経て、63年ヨーカ堂(現・イトーヨーカ堂)に入社。73年セブン-イレブン・ジャパンを創設。同社を小売業として日本一に育てる。2003年勲一等瑞宝章を受章、中央大学名誉博士学位授与。経団連副会長、経済戦略会議委員をはじめとする各種審議会委員などを歴任。『変わる力』『挑戦 我がロマン』など著書多数(撮影/写真部・大嶋千尋)
セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO
鈴木敏文(すずき・としふみ)

1932年、長野県生まれ。56年中央大学経済学部卒業後、東京出版販売(現・トーハン)を経て、63年ヨーカ堂(現・イトーヨーカ堂)に入社。73年セブン-イレブン・ジャパンを創設。同社を小売業として日本一に育てる。2003年勲一等瑞宝章を受章、中央大学名誉博士学位授与。経団連副会長、経済戦略会議委員をはじめとする各種審議会委員などを歴任。『変わる力』『挑戦 我がロマン』など著書多数(撮影/写真部・大嶋千尋)

 セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼CEOは、ライバルは同業他社ではないという。作家の林真理子さんとの対談で明かした。

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鈴木:今年4月に8%の消費税が導入されたけど、いままでは消費税が導入されたら安くすればいいという考え方だった。だけど僕は「新しさを出しなさい。安さだけじゃないよ」と言い続けた。消費税が上がっても新しくした商品は売れている。

林:日本人はみんなコンビニが大好きで、私もコンビニを見つけると寄らずにはいられませんが……。

鈴木:でも、これから5年後のコンビニは大きく変化する。ただ、どんなふうに変わるか、僕にもわからない。

林:会長がわからなかったら、ほかの誰にもわからないんじゃないですか。

鈴木:だから世の中の変化に合わせていく。セブン-イレブンで特徴的な商品というと、最近では100円コーヒーですね。コーヒーはセブン-イレブン創業のときからずっとやっていて、30年、40年と研究し尽くして100円コーヒーができたんです。そうやってわれわれが世の中に変化を植えつけていかなくちゃいけない。5年たったらコンビニは相当変わりますよ。

林:お手本になるようなものはあるんですか。

鈴木:ない。僕はコンビニを自分でやってきて、ローソンさんとかファミリーマートさんとか、ほかのコンビニに入ったことが一回もないんです。

林:えっ、一度もですか。

鈴木:同業他社との競争じゃない。お客さんの変化に対して、自分たちがどう対応できるかということなんだ。スーパーがなぜダメになったかというと、Aチェーンはどうだ、Bチェーンはどうだと同業他社だけを見て価格競争をしてきたから。それでみんな自滅しちゃった。コンビニだって、いま、たまたまうちはほかよりも伸び続けているけど、ほかとの競争じゃないんだよ。お客さんの嗜好との競争なんです。

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋