大相撲の元小結でタレントの龍虎さん(享年73)や歌手の安西マリアさん(享年60)の死因となった心筋梗塞。女優の天海祐希さん(47)も昨年、軽度の心筋梗塞で入院し、舞台を降板したことを覚えている人も多いはずだ。

 9月11日に公表された厚生労働省「人口動態統計の概況」によると、昨年の日本人の死因の第2位は心筋梗塞などの心臓病。死亡者数は20万人弱で、全体の15%を占める。死亡者数は年々増加傾向にあり、日本人の死因としては1997年からずっと2位だ。

 心筋梗塞は、心臓の表面を走る冠動脈という血管が何らかの原因でつまって、心臓を動かすのに必要な酸素や栄養が供給されなくなる病気だ。そのまま放っておけば血液が途絶えた心筋が酸素不足で壊死して、心臓の機能が失われる。

 昨今は医療の進歩で、発症してすぐに適切な治療をすれば、かなりの人が助かるようになったが、それでも死亡率は5~10%程度と決して低くない。

 今回、同センターが開発した「吹田スコア」は、心筋梗塞の「今後10年間に発症するリスク(確率)」を予測できるという。開発に携わった循環器病統合情報センター統計解析室長の西村邦宏医師は、こう話す。

「日本人は欧米人に比べて心臓病のリスクは低いと言われていましたが、近年は、食の欧米化や運動不足による肥満、生活習慣病の増加もあり、正確なところはわかっていません。また、欧米にも『フラミンガムリスクスコア』という心臓病の発症リスクを予測するものがありますが、日本人には当てはまらない。そこでわれわれが80年から蓄積した吹田市の住民データをもとに、日本人の心臓病の発症頻度から確率を導き出したのです」

 リスクのもととなるデータは、吹田市の住民票から無作為に抽出し、同意が得られた健康な人(最終的には男性2796人、女性2725人、平均54.5歳)を約11年間にわたって追跡して得られたもの。この間に心筋梗塞と診断された人の年齢や性別、血圧などの値から、最終的な発症リスクのスコアを作り上げた。

 それが下の表だ。項目は年齢や性別のほか、血圧やコレステロール値といった検査数値など、全部で八つ。検査数値は健康診断や人間ドックなどで測定されているものばかりだ。この項目から該当するところの得点を拾い、それらを足していけば自身の心筋梗塞の発症リスクが予測できる。

 例えば、「60歳の男性、喫煙はしていない、糖尿病はないが、血圧はステージ1の高血圧に該当。LDLコレステロールは140mg/dL、HDLコレステロールは39mg/dL、CKD(慢性腎臓病)はステージ1」だとしたら、合計得点は「56」となり、「今後10年間に発症するリスクは9%」となる。

 年齢が上がるほどリスクは大きくなり、性別では男性より女性のほうが発症リスクは小さい。

【吹田スコア】
■危険因子:年齢(歳)
変数:35~44歳/得点:30
変数:45~54歳/得点:38
変数:55~64歳/得点:45
変数:65~69歳/得点:51
変数:70歳以上/得点:53

■危険因子:性別
変数:女性/得点:−7

■危険因子:現在喫煙
得点:5

■危険因子:糖尿病
得点:6

■危険因子:血圧(mmHg)
変数:至適血圧(120/80未満)/得点:−7
変数:正常血圧(120~139/80~89)/得点:0
変数:ステージ1高血圧(140~159/90~99)/得点: 4
変数:ステージ2以上高血圧(160/100以上) /得点:6

■危険因子:LDLコレステロール(mg/dL)
変数:100未満/得点:0
変数:100〜139/得点:5
変数:140〜159/得点:7
変数:160〜179/得点:10
変数:180以上/得点:11

■危険因子:HDLコレステロール(mg/dL)
変数:40未満/得点:0
変数:4040~59/得点:−5
変数:4060以上/得点:−6

■危険因子:CKD(慢性腎臓病)
変数:ステージ1、2(eGFR60以上)/得点:0
変数:ステージ3(eGFR30~59)/得点:3
変数:ステージ4、5(eGFR30未満)/得点:14

【採点結果】
合計得点/発症確率(%)
35以下/1未満
36~40/1
41~45/2
46~50/3
51~55/5
56~60/9
61~65/14
66~70/22
71以上/28以上

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋