リーマン・ショック後の高値を付けた日経平均株価 (c)朝日新聞社 @@写禁
リーマン・ショック後の高値を付けた日経平均株価 (c)朝日新聞社 @@写禁

 ようやく日本株に光が見えてきた。9月中旬以降、株価の上昇が続いている。消費税増税の影響など国内景気には不安は残るが、米国景気の改善と日本企業の業績の底堅さを背景に、何年にもわたる長期的な株高トレンドに入る可能性も出てきた。

 年末までに日本株はどれだけ上がるのか。大和証券投資戦略部の澤伸悟氏は年末1万7500円を目指す展開になるとみている。

「外国人投資家は昨年の11月、12月、日本株を約4.5兆円買い越し、日経平均は14%ほど上昇しました。多くのヘッジファンドは最近、マネーを新興国株から日本株に動かしているようです。外国人は昨年より買ってくることが期待できます。また、NISA(少額投資非課税制度)の非課税枠は翌年に持ち越せないので、年末にかけて個人投資家による“駆け込み投資”も期待できます」

 消費税増税の対策の舵取りや約127兆円の年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)改革がうまくいけば、ファンダメンタルズの改善期待で動くヘッジファンドの買いなども期待できるという。

「円安期待とファンダメンタルズの改善期待のヘッジファンドのどちらも買ってくれば、株価はさらに上がるでしょう。そうなれば、つられて、中長期で運用する政府系ファンドや海外の年金基金も日本株を買ってくると考えられます。つまり、日本株の底堅い上昇が期待できるようになります」(熊澤氏)

 岡三証券の投資戦略部日本株式戦略グループ長の石黒英之氏は、年末に1万8千円を予測する。

「米国は量的緩和を終了しますが、欧州は量的緩和をしている。引き続き、世界的にカネ余りの状況は続くので、これからも投資マネーは株式などのリスク資産に向かいやすいでしょう。日本株にも良い環境が続きます」(石黒氏)

 デフレ脱却の可能性が見えてくれば、さらに上昇する可能性がある。デフレから脱却するまでは1万8千円前後を行き来し、デフレ脱却が確実となり、企業業績の改善が賃金に反映されるようになると、3万円時代も考えられるという。

 さらに注目するのが個人の貯蓄率の高さだ。

「874兆円、なんと国内総生産(GDP)の1.7倍もの現預金が眠っています。それを投資に向かわせないといけません。日本株の上昇のためにも投資に向かわせることは重要ですし、インフレになると預金で持っていても仕方がない。一人ひとりの金融リテラシーを高める施策をとるべきです」(石黒氏)

 マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は年末に1万7500円、2015年3月末に1万8500円、15年末には2万円強、その後は最終的に3万円強まで伸びるとみている。

「昨年は1年間で株価が5割ほど上がりました。これは、企業業績が3割ほど伸びたからです。今年も企業業績、株価ともに1割ほど上がるでしょう。来年は円安と米国経済の回復でさらに2割ほど上がると考えています」

 広木氏が注目するのが、6月に安倍政権が発表した「日本再興戦略」だ。このなかで、企業の稼ぐ力を取り戻すためにコーポレートガバナンス(企業統治)の強化や、産業再興のための会社法改正、日本版スチュワードシップ・コードの策定などの断行を謳っている。なかでも、投資家の資金で効率的に利益を上げているかを見る指標であるROE(株主資本利益率)の向上が重要だと言う。

「米国企業のROEは15%、日本企業は8.6%ほどと、半分しかありません。それを米国並みにしたら、買ってこない理由がありません」(広木氏)

 米金融大手のバンクオブアメリカ・メリルリンチも7月2日に開催されたセミナーの資料で、「ROE改善や株主還元などが進んでくると、バブルなくして17年に日経平均は3万円を超える見込み」と言及している。

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋