子どもの送り迎えにも限界はある。親の不安は増すばかり (c)朝日新聞社 @@写禁
子どもの送り迎えにも限界はある。親の不安は増すばかり (c)朝日新聞社 @@写禁

 9月23日午後4時すぎ、11日から行方不明となっていた神戸市長田区の小学1年生の生田美玲(いくたみれい)ちゃん(6)が殺害された状態で発見された。事件が起こった神戸市は、同市教育委員会指導課によると、2005年から、登下校を見守る「子ども見守り活動隊」を、すべての市立小学校167校に配置。登録ボランティアは、3万8千人になる。女児が住んでいた地域でも、登下校時に加え、夜回りにも熱心に取り組んでいたという。

 親や地域の目をかいくぐり、子どもに迫る“危ない隣人”からどうやって身を守ればいいのか。

「何より大事なことは、防犯教育を徹底することです。犯人は『景色』『風景』を見て、犯罪をするかどうかを決める。雑木林など人の目が届かない場所は要注意。ここは危ないと分かるようにする『景色解読力』を高めなければなりません」(立正大学の小宮信夫教授[犯罪学])

 阪神大震災の被害を受けた同市長田区は、古い木造住宅を中心に空き家が増えて、空き家率は18.3%(1万390戸)。同市内で最も空き家率が高く、全国平均13.1%を大きく上回る(いずれも08年現在)。犯罪に巻き込まれやすい環境が身近にあったことに、学校や家庭が注意を向けなければならない。

 NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は、「今回のように、不審者が顔見知りで近所に住んでいる場合の対策はとても難しい」と断りつつ、これまでの防犯教育の問題点を指摘する。

「幼い子に不審者はどういう人か聞くと、『黒いサングラスをかけて』と、マンガのようなイメージを持っている。警察の防犯教育もわざわざ不審者の格好をした男が登場する。現実の犯罪とは異なる、誤った先入観を与えている」

 そのせいもあるのか、幼い子は、向き合う相手が不審者かどうかを見分けられないのだという。

「不審者に声をかけられたり、つきまとわれたりした子どもに、相手に違和感を感じたか質問すると、小学1、2年生では8割の子が何も感じなかったと答えました。つまり『この人はおかしい』と気づくことは、小学校低学年では難しいのです。知らない人とは、互いに伸ばした手が触れないぐらいの距離を取るように教えたほうがいい」

 不審者から自ら身を守る意識が大切ということだが、地域防犯のボランティア活動に取り組むNPO法人「日本ガーディアン・エンジェルス」の小田啓二理事長は、ひとつ注文をつける。

「子どもに嫌な思いをさせる人物がいれば、その情報は共有しておくべきだが、『知らない人は無視しなさい』ではダメ。周囲がすべて不審者に見えてしまうと、息の詰まる生活環境になってしまう。異変に素早く気づき、全力で逃げることを教えておきましょう」

 前出の宮田理事長は、そのためには具体的な指示が大切だとし、

「地域の大人や子どもなど複数で行動することが大前提。加えて『全力で走って逃げて』ではなく、『一番近くのお店屋さんか、知っている家に駆け込みなさい』と教えたほうが正しく伝わります。ランドセルを放って、身軽になって逃げることも教えましょう」

 いずれも学校や家庭ですぐに実践できることばかり。わが子を守るためにも徹底したい。

週刊朝日  2014年10月10日号より抜粋