和田竜さん(左)と林真理子さん(撮影/山本友来)
和田竜さん(左)と林真理子さん(撮影/山本友来)

『村上海賊の娘』や映画化もされた『のぼうの城』など従来の歴史小説ファン以外をも魅了する新世代のベストセラー作家・和田竜さん。同じく作家の林真理子さんがその秘密に迫った。

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林:ところで和田さんは、「戦国がいちばんおもしろい」とおっしゃってますね。私も歴史小説を書くことがありますが、どうも戦国時代って苦手で……。

和田:僕はバトルが好きなんですよ。映画監督になりたいと思ったのも、「ターミネーター」という映画が大好きだったからなんです。キャラクターとテーマのあるアクションものが好きで、最近だと「X-メン」とか「X-MEN:フューチャー&パスト」とか。自分でも子供っぽいなと思うんですが、公開されると必ず見に行きますね。

林:戦国モノって、なんだか暗い感じがするんですよね。大河ドラマを見ていても、バカな殿様のために家臣が無駄な死を遂げたり、磔になりながら、「味方は来るぞ!」とか叫んだり……。

和田:おっしゃることわかります。磔(はりつけ)というのは、たぶん鳥居強右衛門(とりいすねえもん)のことじゃないかと思うんですが……。

林:さすが、すぐ出てくるんですね。

和田:演出次第だと思うんですよ。たとえば高笑いしながら「味方が来るから大丈夫だぞ!」と言えば、陰鬱な印象は薄れると思うんです。僕もそういう印象を減らしたいと思っているので、小説でもちょこちょこ工夫しています。実際、戦国時代って明るかったんじゃないかと思うんです。

林:そうなんですか。

和田:戦争がいっぱいある時代ですから、就職先もいくらでもある。殿様が気に入らなきゃ、ほかに行けばいいわけです。江戸時代のように一つの家にずっと仕えなくちゃならないわけじゃないので、自由に生きていた感じがするんですよね。それを前面に出していけば、陰惨さや抑圧感は減っていくんじゃないかと。

林:『村上海賊の娘』の中でも、宣教師のルイス・フロイスが戦国時代の女性について、「処女の純潔を少しも重んじない。それを欠いても名誉も失わなければ、結婚もできる」と書いたことが紹介されていますね。

和田:戦国時代の女性というと、政略結婚の中で悲劇を迎えるというイメージがありますよね。でも、当時日本に滞在したヨーロッパ人が書いたものを読んだりすると、旦那にギャンギャン文句を言う女性もいれば、戦で戦う女性もいる。女性のそうした部分を集約して書いたのが、景という人物ですね。

週刊朝日  2014年10月3日号より抜粋