収益力を取り戻した日本企業の間で、個人投資家に向けた「個人向け社債」の発行が相次いでいる。「社債」とは企業が資金を調達するために発行する債券だ。発行されるのは不定期だが、そこにはさまざまな魅力があるという。

<銀行の定期預金よりも利率は魅力>

 やはり社債は利率が高いのが魅力だ。

 発売後、即完売したというソフトバンクの「第46回福岡ソフトバンクホークスボンド」を見ると、利率は年1.26%。100万円を投資すると年間1万2600円(税引き前)もらえる。償還までの期間は5年。メガバンクのスーパー定期(300万円未満)5年ものの金利年0.03%と比べると、約40倍にもなった。

「個人向け国債固定5年の9月募集の金利は年0.12%(税引き前)です。これより高い利率の債券を選ぶといいでしょう」(債券に詳しい、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏)

 個人向け社債の利率は、発行企業によって異なる。一般的に財務状態や業績の安定した信用格付けが高い会社の銘柄や、償還期間が短い銘柄の利率は低めに設定される傾向があるが、全体的には高めだ。

 今年発行された銘柄の利率を見ると年0.2~1.5%程度で、低金利時代の中では、高めの水準に設定されている。

「今後も定期預金の低金利は続くことが予想されるので、個人向け社債が有利な状況は続きます」(同)

<特典が当たる懸賞つきの銘柄も>

 銘柄に愛称をつけて親しみやすくしたり、購入者向けに特典が当たるなど懸賞をつけて、個人投資家にアピールする銘柄も次々と登場している。前述のソフトバンクは購入者全員に愛媛県の特産、今治タオルで作ったオリジナルの「お父さん応援隊長フェイスタオル」をプレゼント。

 近畿日本鉄道は、地上60階建て、高さ300メートルの日本一高い高層ビル「あべのハルカス」(大阪市)を今年3月に開業したことにちなんで、「あべのハルカスボンド」という愛称をつけた個人向け社債を7月に発行した。ハルカス内の「大阪マリオット都ホテル」宿泊券、商品券など総勢600人に当たる懸賞をつけた。

「3月7日にオープンしてまだ日が浅いので、認知度向上を図りたいと思い、購入された方に特典をつけました」(同社秘書広報部)

週刊朝日 2014年10月3日号より抜粋