財政危機のギリシャではデモ参加者の一部が暴徒化した (c)朝日新聞社 @@写禁
財政危機のギリシャではデモ参加者の一部が暴徒化した (c)朝日新聞社 @@写禁

「消費の落ち込みは想定内」。そんな声も通じないほどに、ジワジワとわかってきた消費税8%後の消費の不振。消費税10%時代は本当に到来するのか。10%に上げると家計へのさらなるダメージは避けられず、上げなければ財政再建が遠のく。政府の取る道はどちらなのか――。

 消費増税を見送ればいいのか。しかし、コトはそう単純ではない。こちらも茨の道だ。

 最大のデメリットは財政再建が遅れることだ。

「今のような社会保障制度を維持したいのであれば、消費税は20~25%は必要でしょう。もし、今回見送りとなれば、今後の実施はこれまでよりも難しくなるでしょうね」(みずほ証券エコノミストの上野泰也氏)

 高齢化社会で社会保障費が増え、国の借金が莫大になるなか、財源となる消費税の増税は、外国人投資家が日本に愛想を尽かさないための必須条件だ。

 外国人投資家が日本株や債券に投資しているのは、財政再建のために消費増税などが実施されることを信用しているからだ。増税を見送ると、外国人投資家が大量に株や債券を売り浴びせる可能性だってある。

 もしかしたら、日本はジンバブエの二の舞いになるかもしれない。

 財政の赤字を補填するために通貨や国債を大量発行すると、「ハイパーインフレ」が起きる。00年代後半、ジンバブエは大統領選挙が混乱し、通貨のジンバブエドルを無節操に発行するなどしたために、物価が極端に上昇し、ハイパーインフレが起きた。紙幣は紙切れになり、経済は低迷した。

 日本も大量に国債を発行している。日本の借金(公的債務残高)の対GDP比は226.1%。ジンバブエの202.4%よりも多い。そのほか経済が低迷しているギリシャの175%、イタリアの133%に比べても断トツに多い。

 日本の国債の大部分は国内金融機関と日銀が買っているから、すぐにはジンバブエ化しないかもしれないが、人口は減少傾向だ。

「今は多額の預金を原資にして金融機関が国債を買っていますが、将来的に人口減が進むと、預金も減り国債も買えなくなります。となると、外国人に買ってもらわないと買い手がいなくなる。今の金利は0.5%ほど。これぐらいの金利だと外国人投資家は買ってくれないだろう。となると、金利を上げなければいけません」(東短リサーチのチーフエコノミストの加藤出[いずる]氏)

 日銀が国債を買う量を増やせばいいじゃないかという声もありそうだが……。

「中央銀行が政府の財政赤字の穴埋めをすればするほど、日本に対する信用が失墜し、悪いインフレと悪い金利上昇は発生します。投資家もますます国債を買わなくなります」(同)

 ちなみに、ジンバブエもギリシャもイタリアも、国債の買い手の多くは海外勢だった。さらに、もっと怖いのは人材のキャピタルフライト(資本逃避)だ。

「景気のために国債を発行して若い世代にツケを回すような政策を取っていると、それに嫌気がさした若者が海外に逃げ出す可能性だってあります」(同)

 となると、国債価格は暴落だ。

週刊朝日  2014年9月26日号より抜粋