テレビのドラマやCMに、まだシワシワで首もすわっていない赤ちゃんが出てきて驚くことがある。

 その多くは「赤ちゃんタレント」だという。つまり、「プロの赤ちゃん」であり、タレント事務所もある。その大手の「セントラル子供タレント株式会社」を訪ねると、所属する赤ちゃんは現在約100人。マネジャーの合羽井一尋さんが言う。

「ウチの場合、赤ちゃんモデルには、生後1カ月以降でないとなれません」

 1カ月検診前の赤ちゃんは何かと心配だという。

「テレビの男性スタッフは、漠然と『赤ちゃんを1人』と依頼をしてきますが、赤ちゃんは月齢で成長段階が違います。仕事量が最も多いのは、首がすわり、まだ立ち歩かない、生後3、4カ月から1歳未満。『誰が見ても赤ちゃん』という基準です」

 赤ちゃんにも「売れっ子」がいる。顔立ちの良さ、人見知りせず親から離れられること、さらには意外なものがある。

「薄毛です(笑)。普通の赤ちゃんの場合、お母さんは薄毛を心配しますが、赤ちゃんのイメージは髪フサフサじゃないですから」

 実際の月齢より体が小さく、薄毛だと、赤ちゃんらしく見え、業界ではモテるらしい。コンプレックスも生かせるチャンスがある仕事なのだ。

 プロといっても、そこは赤ちゃん、撮影は「眠い」「おなかが空いた」と、中断されることもある。

「赤ちゃんがメーンで出るCMなどの場合、メーンの子のほかに、髪形や体格などが似ている子をたいてい2~3人用意する『ダブルスタンバイ(ダブルキャストのこと)』『トリプルスタンバイ』にしています。顔のアップはメーンの子にし、後ろ姿や動きまわっているときなどは他の子を使うんですよ」

 メーンの赤ちゃん、いないいないばあ。

週刊朝日  2014年9月26日号