人生を終えて、眠る先は宇宙──。遺灰を宇宙に埋葬して“流れ星”になるというロマンチックな「宇宙葬」が、日本で現実味を帯びている。

「宇宙葬」を事業化したのは、NASA(米航空宇宙局)出身のエンジニアであるトマ・シベ氏が創業し、宇宙飛行士のブレント・ジェット氏が役員を務める「エリジウムスペース」(本社・サンフランシスコ)。11月、米国内の宇宙基地で1回目の打ち上げが予定されている。同社の日本窓口で事業開発担当役員の金本成生氏がこう説明する。

「10センチ四方の小型衛星の中に、遺灰の一部を1㌢角のカプセルに納め、商業用ロケットに相乗りする形で打ち上げます。国際宇宙ステーションへの物資輸送機でいったんステーションまで運び、そこから宇宙空間に放出させる計画です」

 遺灰を載せた衛星は地球の軌道に乗り、穏やかに数カ月から1年ほど周回した後、無害な形で大気圏に突入して燃え尽き、“流れ星”になるという。

 打ち上げは、インターネットでライブ中継される。スマートフォンやタブレット端末向けの無料GPSアプリで周回中の現在地を確認でき、故人を懐かしむことができる。気になる費用は約20万円と、決して安くはないが、打ち上げまでに100人程度の応募を見込んでいる。日本人にも人気だというのは、七夕や十五夜など、宇宙や星空に古くからインスピレーションを受けている民族だからだろうか。

 
「日本人の宇宙へのロマンは大きいですが、身近ではなく、活用できていないのが現状です。これは故人の『宇宙に行きたい』という願いをかなえるとともに、故人へ思いを馳せることができるサービス。葬儀というより、悲しみを癒やす一つの記念です」(金本氏)

 日本葬祭アカデミー代表で葬祭カウンセラーの二村祐輔氏はこう分析する。

「毎日お仏壇に手を合わせたり、檀家やお寺との付き合いを熱心にしたりする従来の習俗が希薄化しています。お墓や遺骨をどうするかという選択肢が増え、遺骨の一部にその人らしさを見いだそうとする時代になっています。その一つに“宇宙葬”があるのです」

 夜空を見上げ、美しい流れ星を見て大切な人をしのぶ。究極の浪漫飛行に違いない。

(本誌・上田耕司、古田真梨子、牧野めぐみ/今西憲之、伊藤あゆみ、黒田 朔)

週刊朝日  2014年9月19日号