80代認知症女性 突然現れた“親類”に預金使われ、自宅も借金のカタに 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

80代認知症女性 突然現れた“親類”に預金使われ、自宅も借金のカタに

このエントリーをはてなブックマークに追加
自治体には成年後見制度の手続きをアドバイスする「成年後見センター」などの専門部署がある (c)朝日新聞社 

自治体には成年後見制度の手続きをアドバイスする「成年後見センター」などの専門部署がある (c)朝日新聞社 

 認知症の高齢者本人に代わって財産管理をしたり行政手続きを担ったりするのが「成年後見制度」だ。暮らしの見守りに加え、葬式・納骨までを請け負う民間サービスも登場している。自分や親の将来に備え、今から知っておきたい。

 後見人に最も求められる役割とは、やはり、その人の財産をしっかり守り通すことだろう。しかし、本末転倒な事態も起きている。10年6月から12年12月にかけての2年半の間に、後見人による横領などの不正は計1058件、被害総額は94億4千万円に上っている。うち9割以上は「親族」による不正だ。

「『面倒をみているのだからその見返りで』と言って、家族がご本人のお金を使ってしまう。自分が悪いことをしていると思っていないケースも多いんです」

 そう語るのは、法テラス東京法律事務所の太田晃弘弁護士だ。後見人として、認知症の人の財産を親族から守ったことが何度もある。

 定年まで働いたある80代の女性は夫と死別し、子どももいなかったが、一人で暮らすには十分な年金と蓄えがあった。認知症の症状が出始めたとき、「面倒をみる」と親類が訪れるようになった。「お金の引き出し方がおかしい」と気がついた地元の金融機関が、福祉関係者へ連絡。ここで太田さんに協力が求められた。

「すでに預金の大半は消えて、自宅は借金のカタに取られていました」

 太田さんは判断が難しくなった女性の後見人になり、家に設定された抵当権を抹消する裁判を起こして、3年かけて解決した。女性は今、介護施設で暮らす。

 太田さんは認知症の人と、その財産を狙っている複数の人たちの間に介入し、金銭搾取を防ぐこともある。8月中旬に訪ねた、都内の公営住宅に一人で暮らす男性(91)がそうだ。「皮膚科に通える手続きをしたから、来週行こう」という太田さんの問いかけにうなずくも、後見人と認識できていない。妻と死別し、子どもはおらず、きょうだいは他界、甥や姪とも疎遠だ。

 こうした認知症の人の金銭トラブル処理に弁護士資格を持つ後見人は強い味方となる。その暮らしぶりを知る福祉関係者が自治体に連絡し、市区町村長からの申し立てで弁護士などの専門職が後見人に選ばれるというルートをたどる。

 認知症を患う高齢者の財産を守るために、制度につなげることが重要と太田さんは言う。

 いずれにしても、認知症の人にとって成年後見制度は利点が多いが、弱点でもある。後見人がかかわれるのは「臨終のときまで」なのだ。以後の葬儀の手配や埋葬、遺産、遺品の処分は基本的に親族がやらねばならず、「天涯孤独」な人たちの不安は尽きない。そんななかで身寄りのない高齢者の身元保証や身の回りの世話を有料で引き受ける“家族代行”のような仕組みが登場している。

 公益財団法人「東京都防災・建築まちづくりセンター」(渋谷区)は島しょを除く都民を対象に、見守りのほか、葬儀、家財の片づけなどのサービスを実施。例えば葬儀と家財の片づけを頼んだ場合、葬儀代30万8500円、家財の片づけ代15万4200円、5年分の事務手数料5万4千円と合わせて計51万6700円を支払う。同センターによると、制度開始の01年以降771人(13年度末まで)が利用し、「後見人を通して認知症の高齢者からの申し込みもある」という。

週刊朝日  2014年9月19日号より抜粋


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

関連記事関連記事

このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい