国会デモ規制を検討し始めた自民党に、作家の室井佑月氏は怒りをあらわにする。

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 NHKの籾井会長の問題発言から、ネットの呼びかけなどでNHK放送受信料不払い運動が起きていた。つい最近だと、朝日新聞の従軍慰安婦誤報問題で、これまたネットで朝日新聞の不買運動が起きている。ずいぶん前から、自民べったりな読売新聞の不買運動もネット上で見かけるしな。

 あたしは仕事柄、新聞を読まなくてはいけないし(買ってない新聞もあるけど)、NHKにも出演しているので、それらの運動には乗れない。

 だが、そういうことを言い出す人の気持ちも、賛同する人の気持ちもわかる。いや、むしろそういう活動が起きるのは健全で当たり前のことのように思う。

 新聞もテレビも、見る人あってのもの、見る人のために作られているものであるならば、そういう意見の伝え方もありだろう。

 8月29日付の東京新聞に、こんな記事が載っていた。

「自民党は二十八日、人種差別的な街宣活動『ヘイトスピーチ』(憎悪表現)を規制するとともに、国会周辺の大音量のデモ活動の規制強化を検討し始めた」

 なんでも、ヘイトスピーチ規制策を検討するプロジェクトチーム(PT)の初会合で、高市早苗政調会長が、国会周辺のデモや街宣について、

「(騒音で)仕事にならない。秩序ある表現の自由を守っていく観点から議論を進めてほしい」

 と発言したんだとか。

「PTは今後、国会周辺での拡声器使用を制限する静穏保持法などで対応が可能かを調べて、新たな法律が必要かどうかを判断する」

 こりゃ、毎週金曜日に国会前で行われている脱原発デモが標的かしら。

 デモとヘイトスピーチは、まったく違う。ヘイトスピーチはいわゆる差別で、一部の人間を人種などで一括りにし、口汚く罵るものだけど、デモは一般国民が今の政治の在り方に対し、「違うんじゃないか」と思う国民もいるよ、そうわかってもらうために集まるものだ。スピーチの内容より、人数が大切。なぜならば、権力者に対しての訴えだからだ。

 国民の訴えを騒音に感じるなら、国民の代弁者である政治家をやめるしかない。

 脱原発デモが気に入らないのなら、あんな事故があったにもかかわらず原発推進するわけを、国民が納得するように説明したらいい。批判に対し、真正面から丁寧に反論していったらいい。

 あんたがた政治家は、そういう場をたくさん持っているじゃないか。なんのためにテレビ局や新聞社のトップと飯を食いにいっているのだ。メディアの意向を変えようとするのではなく、正々堂々と批判に答える場をもらえばいいじゃない。

 ほんと、国民の気持ちを考えず駒の一つぐらいにしか思っていなそうな、この政権がイヤ。税務署に捕まらないんだったら、あたしたちの気持ちをわかってもらえるまで、税金の不払い運動をはじめたいぐらいだ。

週刊朝日  2014年9月19日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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