株価情報が表示される東京証券取引所内 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 株価対策を最重要課題とする安倍首相にとって、今回の内閣改造は「してやったり」だったに違いない。

 3日の改造人事で、塩崎恭久氏は厚生労働相に決定した。石破茂氏の処遇ばかりに注目が集まっていたが、実は、この人事こそが「アベノミクス第2幕」の本丸である。

 2日の新聞各紙は塩崎氏の人事を先行して報道。これを受け、株式市場は即座に反応した。前日終値で1万5476円だった日経平均株価は2日午前から上昇をはじめ、3日には一時1万5800円を突破。約7カ月ぶりの高値を記録した。

 いちよしアセットマネジメント執行役員の秋野充成氏は言う。

「塩崎氏は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革派議員として知られていました。その人が厚労相になったことで、マーケットはGPIFの改革担当になったと見たのでしょう」

 GPIFとは、約127兆円の年金基金を運用する世界最大級の機関投資家だ。厚労省が所管する。ただ、このお金は国民が毎月納付している国民年金や厚生年金の保険料を原資としているため「安全かつ効率的な運用」が基本。これまでは値動きが少ない国内債券を中心に運用されてきた。

 ところが、塩崎氏は低金利の国内債券を中心に運用することは「(インフレ時の)リスクを負う」と否定的で、国内債券以外への積極的な投資を主張している。ちなみに、基金の1%が国債から国内株式に振り向けられれば、単純計算で1兆2700億円が市場に流れ込む。これは東証1部市場の1日当たりの売買代金の約3分の2に匹敵する規模。市場関係者がGPIF改革の行く末を注視しているのは、この“眠れる巨象”が起き上がる瞬間を待ち受けているからだ。

 5日の記者会見では、現行法では禁止されている個別銘柄への直接投資について、塩崎氏は「議論を重ねていかなければいけない」と踏み込んだ発言をした。

週刊朝日 2014年9月19日号