大手予備校・代々木ゼミナールの大リストラ計画に衝撃が走った。しかし、代ゼミ同様、他の予備校もあの手この手で生き残りを図っている。教育情報を提供する「大学通信」の安田賢治ゼネラルマネージャーはこう話す。

「代ゼミがSAPIXを買収したように、資本力のある大手予備校が有名学習塾を買収している。河合塾は日能研、駿台は浜学園と連携しています」

 河合塾企画広報部長の堀内晃氏は言う。

「高卒の塾生数は2万5千人で2000年から減っていません。最近の傾向として、大学に合格したのに、第1志望の大学を目指すために予備校に通う合格浪人も約3割います」

 受験生が減り、第1志望の大学のハードルが下がっているからこそ、一つレベルの高い大学を目指す学生に良質の教育を提供することが必要なのだという。

「10年ほど前から講師とチューターが協働で受験生をサポートするシステムを始めています。まずは大学生を対象に、社会人基礎力を身につけるプログラムも開発しました。予備校に求められる教育の中身を改善しながらも、これまでと変わることなく一人ひとりの生徒と真摯に向き合っていきたい」(堀内氏)

 駿台予備学校広報部長の田口浩一氏はこう話す。

「駿台は50分授業、対面授業を大切にするなどの伝統を守っていきたい。その一方で、02年に始めた高校教員向けのセミナーや、海外への校舎の展開など社会情勢や時代の変化、生徒や保護者のニーズに応じた取り組みをしていきます」

 実際、駿台以外でも予備校による高校教員向けのセミナーや高校への出張授業は活発になっている。

「かつて学校と予備校には明確な線引きがあり、相いれない雰囲気があった。それが今は共存共栄の考え方が広がっている」(安田氏)

 静岡県の公立進学校で教壇に立つ教師も、予備校での教員向けセミナーに積極的に参加している。

「受講料は1日1万5千円程度。日本史などの人気講座では100人ほどの教員が予備校の授業を受けていました。模擬授業のような形で予備校の授業法を教えてくれて、ためになります」

 受験生が減少しても、志望大学を目指す受験競争はなくならないように、代ゼミが前線から撤退した後も、予備校の生き残り決戦は激しく続いていく。

週刊朝日  2014年9月12日号より抜粋