孫育て。共働きが珍しくなくなり、子育て中の母親が自分の実家近くに移り住むなどして、祖父母に育児面での支援を仰ぐことが増えてきた2000年ごろから耳にするようになった造語だ。

 内閣府が13年に実施した全国の20~79歳の男女3千人対象の調査でも、「子どもが小学校に入るまでは、祖父母が育児の手助けをすることが望ましいか」との問いに、「とてもそう思う」46.9%、「ややそう思う」31.8%と、8割近くが同意している。核家族化が進む社会だけに、世代を超えて育てるメリットを否定する人はいない。

 だが、最近、孫の世話で疲れたり負担を感じたりする祖父母が増えているのも事実だ。08年から「楽しい子育て・孫育て講座」を開催する日本助産師会(東京都台東区)の岡本喜代子会長が指摘する。

「働くママが増え、祖父母たちは以前より孫とかかわるようになったのは事実です。特に実の親には遠慮なく頼れるので、『孫育て』が主流にすらなりつつある。そして手伝ってもらって当たり前だという娘夫婦の感覚から、トラブルになることが増えています」

 岡本さんが実際に見聞きした祖父母の悩みは以下のとおりだ。

●毎日、孫の送迎をしているのに娘から感謝の言葉ひとつない
●自分の習い事を後回しにしていることを娘がわかってくれない
●孫がぐずったとき、どこまで叱ればいいのかわからず、困り果ててしまう
●孫に会うと発生する食費や交通費が馬鹿にならないのに払ってくれない

 孫には惜しみない愛情を注ぎたい。だが、自らの生活環境を変えて飛び込んだ結果、悩むケースもある。山形市内で夫婦で経営していたラーメン店をたたんで上京した女性(66)もそんな一人だ。

「いちばん不安なのは私たちの体力。いつまでこの生活を続けられるのか……」

 女性は夫(66)とともに、都内の保険会社で総合職として深夜まで働く娘(42)夫婦と同居、その共働き生活を支える。2歳の男の子の孫の保育所の送迎から食事、風呂、寝かしつけまで一手に引き受ける。

 きっかけは、孫を出産した直後の娘が、名古屋へ単身赴任すると言いだしたから。子連れで行くと聞いて、女性は慌てた。

「心配で心配でいてもたってもいられず、お店を閉めて、私たちが名古屋へ行くことにしました」

 今春、娘は東京転勤で戻ってきたが、女性たちは山形には帰らず同居を続ける。娘夫婦は感謝を伝えてくるが、東京暮らしは大変なことも多いという。

「孫が大きくなったら山形へ帰りたい。でも、すでにもう腰も足も痛い。自分の体のほうが先にガタがくるように感じます」

週刊朝日  2014年9月12日号より抜粋