美輪:トリが歌ったあと、皆さんにぎやかに出てらっしゃいますでしょう。歌の印象が吹っ飛んでしまいますから、「最後から3番目か4番目にしていただけませんか」とお願いしたんです。そのとおりにしていただいたんですが、歌が終わるやいなや、紅白はまだ続いているのに、「いまツイッターが大変なことになってます」と言われて、こっちがびっくりしました。

林:群を抜いて印象に残った歌でしたよ。心に残りました。

美輪:ありがたいですね。いちばんうれしかったのは、「いままで親不孝しててごめんね。母ちゃん、これから親孝行するからね」って書いてる若い方がすごく多かったことなんです。

林:それにしても、当日のNHKホールは、ガヤガヤしているわけですよね。そこであれだけの集中力を発揮されて、空気を変えてご自分の世界をおつくりになるというのは、並大抵のものではないと。

美輪:今年で芸能生活が64年になりますしね。イントロがはじまると、その世界に入ってしまうんです。ただ、入り込みすぎると独りよがりになりますから、常に20%くらいは理知に、多角的に見てなくてはいけませんね。

週刊朝日  2014年9月5日号より抜粋