古市憲寿さん(左)と林真理子さん(撮影/写真部・植田真紗美)
古市憲寿さん(左)と林真理子さん(撮影/写真部・植田真紗美)

 29歳の若き論客、古市憲寿さん(社会学者)が作家・林真理子さんと「週刊朝日」で対談した。

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林:古市さんは最新刊の『だから日本はズレている』で、ネットは実は思ってるほど世の中を動かしていないと書かれてますね。

古市:ネットで注目されているものをメディアが取り上げるから、ちゃんと火がつくんですよね。ネットだけで広がったものはあんまりないんじゃないですか。ネット上の有名人だって、マスメディアで取り上げられて初めて一般の人が知るわけじゃないですか。本みたいに1万部、2万部売れればいいものはネットでいいと思いますが、それ以上の数を売るには限界があると思いますね。

林:古市さんのこの本も、すごく売れてるらしいじゃないですか。

古市:といっても10万部……。

林:すごいじゃないですか。いま、10万部を超える本なんて、なかなか出ないですよ。

古市:たまたまです。けっこう年配の方に買っていただいてるみたいです。

林:そうなんですか。古市さんのファンの若い人が買ってるのかと思ったら、違うんですね。

古市:僕の読者、けっこう年配の方が多いんです。日本って人種や階級の差が比較的少なくて、年齢で人を区別することに慣れてる社会なんですね。だから年配の方は、若者について知りたいんじゃないですか。

林:でも、この本を読んだおじさんおばさんたちに、「なるほどなるほど、いまどきの若者がわかったぞ」と思われるのもちょっとシャクでしょう。ほんとはそんなもんじゃないんだけどって。

古市:若者といってもほんとに多様ですからね。僕自身、“若者代表”としてメディアに呼ばれることがありますが、すごく違和感を覚えますね。

林:古市さんは企業の講演会に呼ばれて、「どうですか、わが社は生き残れますかね」と意見を求められることも多いんじゃないですか。

古市:ありますね。以前、入社3年目くらいまでの若手向けの講演会をやったときに、ちょっとどうかなと思うことがありました。ちなみに朝日新聞なんですけど(笑)。

林:おっと……(笑)。

古市:講演後の質問コーナーで、質問ができないんですよ。「質問」って言ってるのに、とうとうと自分の意見を述べちゃったり、要点がわかりづらかったり。「記者なのに大丈夫かな」みたいな(笑)。

週刊朝日  2014年8月29日号より抜粋