証券会社の街、東京・兜町で話題になっていたニュースが現実味をおびてきた。

 8月8日、リクルートホールディングスは、東京証券取引所への今秋の上場をめざして準備を進めていると発表した。10月にも上場が認められる見通しで、時価総額は1兆円規模になるとみられている。

 また、無料通話アプリを提供するLINE(ライン)も、年内に東証に上場する方針。こちらも時価総額は1兆円規模になる見通しだ。1兆円規模の株式上場は、4年ぶりだ。

「市場から多くの資金を吸収する大型の株式上場は、相場の調子が良いときでないとできません。こうした動きは、相場回復の象徴といえるでしょう」(中堅証券の営業担当)

 新規に上場する企業は増えている。新規上場で株式を公開することをIPOという。06年のライブドアショック後、マザーズ市場などの新興市場が低迷し、IPO社数は激減。追い打ちをかけるように、08年にリーマンショックが起きた。

 しかし、昨年は54社まで回復。6年ぶりに50社を超えた。リーマンショック前の07年の121社にはまだ及ばないが、確実に回復しているようだ。

 今年は7月時点で新規上場数は30社。年末までに昨年と同数程度か、それ以上のIPO社数になると見込まれている。日本は3月決算の企業が多いため、決算や株主総会などのプロセスを経ていくと、IPOは9月以降に増えやすい傾向があるという。まさに、これからが投資のチャンスといえるのだ。

 
「IPOは新規のお金を呼び込むため、株式市場を活性化してくれます。また、うまくいけば個人投資家に多くの利益をもたらしてくれるのです」(前出の営業担当)

「IPO投資」の仕組みを説明しよう。

 まず、A社の上場手続きを担う証券会社が、その証券会社に口座を持っている投資家に「A社の株を買いませんか」と募集をかける。抽選が行われて、当たった投資家が株を取得できる仕組みだ。取得する際の価格を公開価格、上場して最初の株価を初値と呼ぶ。

 初値が公開価格を上回った場合、そこで売ってしまえば、簡単に利益を手にすることができるのだ。

 今年IPOした企業をまとめると、30社中21社の初値が公開価格(株価は8月15日現在)を上回っている。

 例えば、7月15日に上場した、スマホ向けアプリを提供するイグニスは、公開価格1900円に対し、初値は8400円。100株を買った場合、19万円(1900円×100株)の元手が84万円(8400円×100株)に。その時点で売れば、65万円の利益だ。

 同じ買い方をすれば、6月27日上場のオンライン英会話を運営するレアジョブは19万8500円、6月24日のネット広告システムのフリークアウトは50万円の利益が出た計算となる。

「IPOはさながらお祭り」(IPO関係者)

 という声があるように、上場に夢と期待を膨らませる経営者と同じように、投資家も初値が大きく上がることを期待して群がる傾向にある。

週刊朝日  2014年8月29日号より抜粋