台風による延期に見舞われたが甲子園が開幕した。プロゴルファーの丸山茂樹氏は、甲子園でたびたび起こる大逆転ドラマにまつわり、ゴルフでの大逆転秘話を明かした。

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 いやー、夏、夏、夏。あっついですねー。「暑い」じゃないですよ。「あっつい」。みなさん、いかがお過ごしでしょうか?

 夏の甲子園も開幕。今年はどんなドラマが生まれるんでしょうか。

 僕の高校野球の思い出といえば、これはもうPL学園(大阪)の「KKコンビ」ですよね。1983年夏から85年夏まで5季連続で甲子園を沸かせたエースの桑田真澄さんと、4番打者の清原和博さん。あの二人の人気たるや、もう別格中の別格でしたからね。

 あんまり野球中継を見るタイプじゃなかったんですけど、さすがにあの時期のPLの試合は欠かさずに見ました。だって次の日に高校の部活に行って、話題についていけなくなりますから。ゴルフ部でも、夏は桑田さんと清原さんの話になってましたからね。

 お二人は僕の2学年上で、プロゴルファーの谷口徹さんがPLの同級生。ジュニアの試合で徹兄さんと一緒になると、「桑田さんは学校ではどんな感じなの?」とか、「清原さんってやっぱり怖いの?」なんて質問攻めにしてましたね。

 甲子園の中継を見てると、9回裏ツーアウトなんていうと、負けてるチームのアルプススタンドが映って、みんな泣きそうになっててね。ああいう感極まる瞬間ね、結構好きですよ。もう何百回と見たシーンですけど、毎回感動します。

 青春って感じがしますよね。やっぱりあの3年間しかできないことのなかの、一瞬の思い出ですから。みんながああやって感極まるってのは、ただ泣いてるんじゃなくて、特別な意味合いを持ってるんですよね。

 
 見てる我々としても、確かに試合展開も興味ありますけど、結構ああいうジーンとくる場面を見たいと思ってる部分もあってね。高校野球を通じて、青春を感じたいというね。

 高校野球といえば、石川大会の決勝で、ゴジラ松井の母校・星稜がすごいことをやっちゃいましたね。9回裏の攻撃前に0―8で負けてて、最終回に9点取っちゃったんですね。大大大逆転サヨナラ勝ちで甲子園!

 このケース、ゴルフでいえば、「2位に8打差のトップで最終ホールで、9オーバーたたく」みたいなもんですね。いやあ、ほんとに考えられない。

 僕がパッと思いつく18番での大逆転といえば、95年11月の「ダンロップフェニックス」ですね。尾崎将司さんが9アンダーで18番パー5を迎えたとき、10アンダーの3人のうち、2人はすでにホールアウト、1人は同組でした。残り202ヤードの第2打をピン下8メートルにつけ、イーグルパットをねじ込んだんです。

 優勝決定の瞬間、大きくガッツポーズするジャンボさんをテレビカメラがとらえたんですけど、キャディーさんが完全に前に映り込んでて。ジャンボさんが愚痴ってたのを思い出します。

 高校野球の大逆転の話に戻りますけど、負けた小松大谷のみんなはいまも、ほんとにつらいでしょうね。選手のみなさんはなんとか気持ちを切り替えて、次のステージへ向かってほしいです。それには周囲のみなさんの心遣いも必要になってくるでしょうね。

週刊朝日  2014年8月22日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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