西武元監督の東尾修氏は、夏場の自己管理ができる一流選手は、夏に活躍すると指摘する。

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 久々にマウンドに立った。8月4日に行われた「サントリー ドリームマッチ 2014 in 東京ドーム」。やっぱり自然と体が熱くなったな。西村徳文、駒田徳広といった俺より一回りほど若い2人を相手にキッチリと打ち取った。投げる前は打者1人の予定だったけど2人になった。翌日は体がバリバリだったよ。

 わずか10球ちょっと、ウオーミングアップを含めても30球くらいしか投げていない。東京ドームで涼しい中での試合のはずなのに、投げた後は体のほてりがなかなかおさまらなかった。瞬間的に爆発的なパワーを出すのが野球。ウオーミングアップと試合後のメンテナンスは怠ってはならない重要な要素だよな。

 特にここ数年の夏は信じられない暑さだ。ナイターでも気温30度を超えている。屋外球場の試合前の練習時には気温35度、グラウンドレベルでは40度以上になっている。大リーグでは、ダルビッシュが所属するレンジャーズなど、猛暑の中では試合前の屋外練習を全部キャンセルするなどの対応をしているが、屋外球場を本拠地とする球団は、真剣に考える必要があるよ。

 ロッテがQVCマリンでの練習を短パンで行うことを一時的に許可したり、阪神が打撃練習時間を短縮したりして対応していると聞く。完成された選手の集まりである大リーグと違い、日本では若手や調子を落としている選手がバットを振り込むことも大事。守備練習もそう。選手個々のルーティンだってある。すべての練習をなしにすることはできないから、うまく趣向をこらすことが大事だ。

 プロなら専門のトレーニングコーチがいて、さまざまな予防策を講じることができる。ただ、アマチュア選手、特に高校生などは、専門家が各校についているわけではない。甲子園高校野球の熱戦が始まったけど、注意が必要だ。水分は一度に大量に飲まず、こまめにとる。キンキンに冷えたものは内臓にダメージを与えるのでとらない……。最低限の知識を持ってプレーしてほしい。

 そして、アフターケアだ。簡単にできるものを紹介したい。

 水温15~18度に設定された水風呂に下半身を浸すこと。腰から下、あるいはひざ下だけでもいい。投手のアイシングの理論に似ているけど、体のほてりを抜くことができる。バケツに氷水を入れておいて、試合前に足を浸すだけでも、体はシャキッとするよ。試合後の水風呂は、私も西武の現役時代にやっていたし、監督になってからも選手に勧めていた。

 よく海水浴で日焼けした後、皮膚を冷やさずに体がほてったまま就寝することがあるでしょ。暑いからとエアコンの温度設定を下げて、次の日に風邪をひいた経験のある人もいると思う。すぐに体のほてりをとることは、試合中の水分補給と同じだけ重要なことだよ。

 空調が利いたホーム球場をもたないチーム、セの阪神、広島、ヤクルト、DeNA、パでも楽天、ロッテ、西武といった球団が夏場をどうしのぐかは、チームの最終成績を大きく左右する。夏場は野手も投手も関係なく、シーズン開幕からの疲労がたまった状態で、体力的にもきつくなる。

 だが、本当の一流選手は、夏場に成績をグンと上げるよね。特にこの猛暑。意識の違いで、その差は大きく広がる。

週刊朝日  2014年8月22日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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