作家の室井佑月氏は、集団的自衛権行使容認を国際公約で既成事実化しようとする安倍政権の動きについてこう危惧する。

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 7月27日、安倍内閣の集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対する憲法学者らでつくる「国民安保法制懇」が名古屋市で集会を開き、「閣議決定は憲法に違反している。政府が行おうとしている関連法改正も違憲性が高い」と訴えたそうだ。翌日の東京新聞によれば、小林節慶応大名誉教授が、

「憲法を無視する安倍内閣は倒さないといけないと思うようになった」

 と強調したらしい。

 頼もしい人々だと思う。世論調査の内閣支持率を見ると、小林教授とおなじことを考える国民もじんわり増えてきたし。

 国民安保法制懇が集会を開いた日の前日の東京新聞の「こちら特報部」を読んで、あたしは不安になったもの。

「国際公約で既成事実化」という見出しの。

「集団的自衛権行使を容認する閣議決定を受け、政府・与党は自衛隊法など関連法『改正』を来春以降に見定めている。約十カ月間の間隔は知事選や来春の統一地方選への影響を避けるためとみられがちだが、その間に各国首脳に根回しし、既成事実化することが狙いという指摘もある。つまり、国際公約で国内議論を空洞化するという手法だ。この手法は、安倍政権下では常とう手段になっている」

 なんつー卑怯な政権だ。

 
「もう世界に約束しちゃったからさ」

 国民の意見も聞かず、それで押し通そうとするなんて。あの方がいうように、この国の最高責任者は今はあなたなんでしょうけど、この国は国民主権。主役は国民なんですけど。

 国のあり方である憲法をいじるっていうのに、なぜ国民に見えるように議論をしつくさないのだ。

 新聞によれば、

「実際、安倍首相は(7月)一日の閣議決定後、六日からニュージーランド、豪州、パプアニューギニアのオセアニア三カ国を巡り、解釈改憲の意義を説いた。さらに最重視するのは、年末に予定されている日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の再改定とみられる」

 だってさ。

 こりゃあ、安倍内閣が倒れたその後の後遺症にも悩まされそうだ。勝手に約束してきちゃってんじゃん。

 そういえば、集団的自衛権行使容認の閣議決定後、某公共放送でこの問題をちょろっと取り上げたとき、あたしは解説委員の方に不安だと思う事柄を2、3質問したのだ。

 その方は、

「まだ閣議決定の段階で、これで決まりじゃない。これから議論がしつくされ……」

 と何度もいっていたぞ。ほかのテレビ番組もウオッチしてみたが、解説委員はみんなそういっていた。ぜんぜんそうなってないじゃんか。

 やっぱ、暴走政権にものを申すには、国民の一人一人が不安も不満も躊躇なく口に出すようにして、これから約10カ月間に起きる知事選や来春の統一地方選へ、影響を与えまくるってことだけかも。

 がんばろう。

週刊朝日 2014年8月22日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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