本誌(3月28日号)がスクープした、関西一円で中高年男性が相次いで“怪死”した連続不審死の捜査がついに動いた。

 事件が大きく動いたのは、7月29日だった。毎日新聞朝刊に、〈死亡2男性から青酸 周辺に60代女性 連続変死か〉との見出しが躍った。2012年3月にバイクで転倒して死亡した大阪府貝塚市の男性(Xさん=当時71歳)の血液から青酸系の物質が検出されたこと、この男性の知人である60代女性の夫も昨年末に青酸化合物で変死していることから、男性2人が事件に巻き込まれた可能性があると報じたのだ。

 この60代女性こそ、本誌がこれまで報じていた渦中の女性、Aさん(67)だ。

 29日の午前9時14分。記者の電話が鳴った。Aさんからだった。

「毎日新聞、読んでないけど、内容はよく知っている。こんなこと書かれて、ウチはホンマ、苦しい。なんで、ここまでやられるのんや。Xさんが亡くなって2年やろう。なんで後から後から、たたかれるのか」

 と早口で不満をまくしたてた後、こう続けた。

「警察が調べたかって、結果は変わらへんから」

 そう言うと、電話はプツリと切れた。

 一連の連続不審死が捜査線上に浮上した発端は、13年12月にAさんの夫だった京都府向日市のYさん(当時75歳)が亡くなったことだった。突然、自宅で倒れたYさんは、救急搬送されたが、間もなく死亡。遺体を解剖したところ、体内からは青酸化合物が検出された。当然、京都府警は自宅で一緒にいたAさんを聴取したが、証拠がそろわず、事件は暗礁に乗り上げたかと思われた。だがAさんの過去を調べると、元夫や内縁関係の男性が突然死していることがわかったのだ。

 
 これまで、Aさんは4回の結婚をしている。最初の夫が1994年に亡くなり、最後の夫であるYさんが13年に死亡するまでの間、実に3人もの男性が、結婚して数カ月から数年で突然死するという異常事態が繰り返されていた。

 今回、新たに遺体から青酸化合物が検出されたXさんについて、本誌(4月25日号)はすでに詳報していた。新聞報道ではAさんとXさんは、「知り合い」と記されていたが、実は結婚前提の内縁関係にあった。

 Xさんも他のケースと同様、Aさんと交際を始めて1年足らずという短期間で、突然のバイク事故で亡くなっていた。

「Xさんは健康オタクで、自宅にサウナを設置、健康食品を常用し、酒はたしなむ程度。新しく中古マンションを買ったばかりだったのに、亡くなったと聞いて本当に驚いた」(知人)

 2人の間に婚姻関係はなかったが、遺産を相続したのはAさんだったという。Xさんの友人が明かす。

「Aさんは、Xさんに『マンションをAさんに譲る』という遺言状を書かせていたようです。Aさんは所有権を自分名義に変え、Xさんの死後すぐにマンションを売却。そのお金を相続することができたのです」

 Xさんの実兄は、当時をこう振り返った。

「Aさんに『ちょっとくらいの遺産はあるでしょう』と尋ねると、『まったくない』とぴしゃりと言われ、親族は一円ももらえませんでした」

(本誌・今西憲之)

週刊朝日 2014年8月15日号より抜粋