3カ月という期間を、ずっと日本で過ごすのは7年ぶりだという。イモトアヤコさんは、2007年から人気バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」の珍獣ハンターとして活躍し、日本よりも海外に滞在する時間のほうが長くなった。それが、この夏、三谷幸喜さん作・演出の舞台「君となら」に出演するにあたり、7月から9月まで、稽古場と自宅、劇場と自宅を往復するような、規則正しい毎日を送っている。

「去年、雑誌で三谷さんと対談させていただいたときに、『舞台をやりたい』という話をしたことがあったんです。それから、『ぜひ僕の舞台に』『え~、社交辞令じゃないんですか?』『僕は、社交辞令は言わないんです』、みたいなやりとりがあって。しばらくして、このお話をいただきました。ただ、この間ドラマでお世話になったプロデューサーさんに、私が、『今度舞台をやるんです』って言ったら、『舞台といえば、私、学生のときに三谷さんの“君となら”という舞台を観て感激して、この世界に入ろうと思ったんだ』って話をされて、『私が出るの、それです』とは言えなかった。そんなに人に影響を与えていた作品なんだとわかって、ちょっと震えがきました(苦笑)」

 舞台は初めてだが、映像での芝居は何度か経験している。4年前、橋田壽賀子さんが脚本を手がけたドラマ「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」に出演したときは、「お芝居って、実はバラエティーで自分がやっていることに近いのかもしれない」と感じた。

「私は元々、自分で『こうしよう』と考えるよりは、人から言われたことを自分なりに咀嚼して、工夫していく作業のほうが好きなんです。初めてのお芝居でも、珍獣ハンターでやってることとは別物だと思っていたのに、演じている最中にふとアドレナリンが出る瞬間があって、『根っこは一緒だ』と思った。もちろん、ペットボトルに飲みやすいようにストローが刺さっていたり、休憩時間に何も言わなくても椅子が用意されるような環境は、ドラマとバラエティーとでは全然違いますけど(笑)」

 自称“目立ちたがりの負けず嫌い”。子供の頃、家族でカードゲームをしながら、負けるたびに悔しくて泣いた。中学のときは陸上部で、リレーの選手として結果を残すために、必死でダイエットに励んだこともある。

「お笑いの養成所に入ったばかりの頃は、“男芸人全員ぶっつぶしてやる!”みたいな感じで、かなり尖ってたと思います(苦笑)。当時は、300人ぐらい生徒がいて、その中で目立つにはどうしたらいいかだけを考えていたので……。でも、目立ちたいとか、爪痕残そうとしたりすると、空回りするのが関の山(笑)。この7年で学んだのは、バランスをとるのがいかに大事かってことです。バラエティーでもお芝居でも、ひとつの作品の中で自分らしさを出していければ、それでいいんだって」

週刊朝日  2014年8月8日号