作家でコラムニストの亀和田武氏が、週刊朝日連載コラムで雑誌批評を行っている。今回は、マガジンハウスのある月刊誌だ。

*  *  *
 大判のビジュアル誌の上段には簡潔に<サマーライフ。>の文字が。表紙の半分強を占めるのは、赤瓦の家の写真である。

 これは、ひょっとして。ふと嫌な予感が頭を掠(かす)め、「アンド プレミアム」(マガジンハウス)9月号を手にとって、ページを開く。

 不安は的中した。巻頭近くに「石垣島からフェリーで10分。竹富島に到着し、2012年6月にオープンした<星のや 竹富島>へ」とある。

 昨年2月、朝日新聞は夕刊で4日連続、この問題をレポートした。「各地の破綻した高級旅館などの再生ビジネスで全国展開する」(朝日)のが星野リゾートだ。島には無秩序な開発を厳しく規制する「竹富島憲章」がある。なのに大型リゾート施設はできた。「憲章に触れるのではないかと思う」(朝日)島民はいる。

「星野リゾートは下水の処理水を地中に流していると説明している。いずれ地中から海に流れ出し、サンゴ礁に影響を与えるのではないか」(朝日新聞13年2月27日付夕刊)。

 そんな島民の存在を、編集部は知ってか知らずか、写真にこんな文章を記す。「<星のや 竹富島>のコテージの庭にはサンゴの白い砂が敷かれていて、本当に島で暮らしている感覚を味わえる。さぁ、海へ行こう」。モデルが履くサンダルが、島の状況を知ったら、どう思うか。

 タイアップ記事といわれても仕方ないだろう。私もタイアップ全部を否定するほど野暮じゃない。でも、私はこの雑誌、けっこう好きなんだ。どうせタイアップするなら、もっとオシャレでクリーンな会社とコラボしてよ。

 島民の窮状につけこむように施設を建てた企業が、まるで島の美しさを守ってるかのような内容には、がっかりだ。

週刊朝日  2014年8月8日号