たとえば、甘利明経済再生相は7月17日に「経済の好循環が回りつつある」と語っている。日本銀行が7月に発表した「金融経済月報」も「基調的には緩やかな回復を続けている」と政府見解に歩調を合わせている。あくまで「景気は上向いている」という認識だ。

 ところが、各種統計をつぶさに見ると、それは決して正しくないことがわかる。上の表は、各業界の6月の売り上げや販売量などをまとめたものだ。軒並み厳しい数字が並ぶが、特に悲惨な状況にあるのが輸入車販売で、6月の販売台数は前年同月比でなんと21・5%も減少している。

「3月までの販売台数は大幅増でしたが、4月からガクッと減ってしまいました。来店者数も激減して、特に新規来店者が少なくなりました。それでも、7月から盛り返して前年並みになるだろうと思っています。これは予想というよりも、希望なのですが……」(日本自動車輸入組合)

 前出の小巻教授は言う。

「97年も、8月になってようやく自動車販売や百貨店の売り上げの減少が一時的なものではなく、景気後退の一因として認識されるようになりました。『想定内』ではなかったのです」

 消費税の引き上げ前には駆け込み需要で消費は増加し、引き上げ後は反動である程度は消費が減少する。だが、97年にはその「想定」を超える不況になってしまったというのだ。

 今年も「想定外」の事態は進んでいるのか。東京商工リサーチの友田信男氏によると、今年4~6月は、個人消費に直結する企業の倒産が増えているという。

「婦人服や子供服の小売店や美容室などへの影響が大きい。また、3月までに急激に受注数が増えたのに、4月からパッタリと仕事がなくなったことで、資金繰りに行き詰まった企業も続出しています」

 消費増税が景気に与える悪影響について早くから警鐘を鳴らしていたのは、嘉悦大学の高橋洋一教授だ。

「6月から出ている統計は悪い数字ばかり。どこかにいい数字が出ていないかと探していたのですが、『消費総合指数』が少し上昇しているぐらい。これは、総務省が発表している『家計調査』に鉱工業出荷指数などの供給側の数字を合わせ、消費の動向を示すものです。生産が増えているので数字がプラスになっていますが、需要の減少を正しく予測できていないために、実際には売れ残りの在庫が増えています」

週刊朝日  2014年8月8日号より抜粋