地元住民により子供の犠牲者を悼むぬいぐるみが並べられた墜落現場 (c)朝日新聞社 @@写禁
地元住民により子供の犠牲者を悼むぬいぐるみが並べられた墜落現場 (c)朝日新聞社 @@写禁

 乗客・乗員298人全員が死亡したマレーシア機撃墜事件で、窮地に陥っているロシアのプーチン大統領。そんな中、北方領土をエサに日本を懐柔すべくロシアが動き出したという。ジャーナリスト・黒井文太郎が取材した。

 苦しい立場に立つプーチン大統領だが、少しでも国際包囲網を緩和するべく“ウルトラC”を模索中との情報がある。

「プーチンが今秋、訪日する方向で日ロで進めていましたが、米国の強い反対もあり、絶望的となっています。安倍首相としては、悲願である北方領土返還の交渉を進展させるため、ロシアと外交的に敵対したくない。こうした事情を熟知しているプーチンは、領土問題の進展を匂わせるような言動で安倍政権に揺さぶりをかけてくる可能性が高い」(外務省関係者)

 故郷の山口県下関市で講演した安倍首相はロシアへの批判が高まる中でも、「ロシアには責任ある国家として国際社会のさまざまな問題に建設的に関与してもらわなければならない。プーチン大統領との対話を続けていく」と表明。

 北方領土交渉をにらみ配慮をこうにじませた。

「一日も早い(ロシアとの)平和条約の締結に向けて粘り強く交渉を続ける」

 だが、そこは海千山千のロシアのこと。森政権など今までの交渉と同様、具体的な返還につながるような言動は結局は期待できないだろう、との見方が大勢だ。

「安倍首相がプーチンの窮地を救うほどの外交影響力を持つのならば、ロシアも本気で北方領土というお土産を検討するだろう。だが、アメリカとロシアがガチンコ勝負の駆け引きを行っている最中では、安倍首相など吹けば飛ぶような存在でしかない。そんな状況を見誤り、日本が“媚ロ外交”に走れば、欧米の怒りと軽蔑を買う結果になるだけです」(同前)

 甘い希望的観測だけでプーチン大統領の術中にはまることのないよう、冷静な情報分析が求められる局面といえるだろう。

週刊朝日 2014年8月8日号より抜粋