くるぶし丈で、裾がやや絞られた色の濃いブルージーンズの岸田一郎さん。ジャケットに白いTシャツを組み合わせている(撮影/写真部・岡田晃奈)
くるぶし丈で、裾がやや絞られた色の濃いブルージーンズの岸田一郎さん。ジャケットに白いTシャツを組み合わせている(撮影/写真部・岡田晃奈)
「ジーンズは、ただはいているだけでかっこいい服ではなくなったよね」と岸田一郎さん(撮影/写真部・岡田晃奈)
「ジーンズは、ただはいているだけでかっこいい服ではなくなったよね」と岸田一郎さん(撮影/写真部・岡田晃奈)

 若者がジーンズをはかないらしい――取材先でそんな話を耳にした。確かに、目につくのは、ジーンズ姿の中高年男性ばかり。でも正直、ダサい。

 ならば50代以上の男性がジーンズを着こなすには、一体どうしたらいいのか。余計なこととは思いながら、毎号ジーンズ特集を組んでいる男性月刊誌「Safari」編集長の榊原達弥さん(51)に、アドバイスを求めた。

「日本人男性はカジュアルなファッションだと、だらしなく貧相に見えてしまいがち。そうならないために、まずは自分のキャラクターを知ることから始めましょう」

 榊原さんが例に挙げたのは、グルメ番組で「まいうー」と満面の笑みで食べる姿がおなじみのお笑いタレント、石塚英彦さん(52)だ。ふくよかな体にジーンズのオーバーオールがよく似合う。

「でも、細身の僕が着るとおかしくなるんですよ。インテリ風の人は濃い色でカチッとした印象が出るジーンズをはけばいい。ワイルドな顔つきならば色落ちしたアースカラーでも可なんです」(榊原さん)

 次に重要なのは、サイズ選びだ。中高年になるとおなかが出てくるが、それを隠すのではなく、おへその下あたりでベルトを締めるのがいい。今のトレンドは裾に向かって少し細くなる型で、裾丈はくるぶしが半分隠れるぐらいがベスト。こうすれば、かっこよく見えるという。

「上に着るシャツは、おなか回りに合わせて選ばないでください。サイズが大きめで肩が落ちていると、どうしてもカッコ悪く見えてしまう。ジーンズと一緒に着るなら、肩幅がきちんと合ったジャストサイズが望ましい」(同)

 このルールに従って見事にジーンズを着こなしている人に会いに行った。かつて“ちょい不良(わる)オヤジ”なる流行語を生んだ雑誌「LEON」の創刊編集長だった岸田一郎さん(63)だ。

「いわゆる『若作り』がアカンのですよ、ただのチャライじじいになってしまう。今、我々世代が勝負すべきは若さよりも年相応の『渋さ』で、上品で貫禄がある着こなしが重要。戦後、常に時代を作ってきた世代だからこその『やんちゃ具合』を醸し出すのです」

 そんな「やんちゃなジジイ(略してヤンジー)」を目指そうと訴える岸田さんは9月、雑誌「マデュロ」を創刊する。対象は50~60代の男性で、テーマは「人生の最終章をいかにワクワクして生きるか」だ。

「あっという間に還暦を過ぎたけれど、肉体的にも精神的にも、とても元気。枯れるにはまだまだ早い。ジーンズをかっこよくはいて、小僧やオヤジがマネできない『ヤンジー』の“テク”を送り出すつもりです」

 最後に今回、イラストレーターのなかむらるみさん(34)に、おじさんの魅力を聞いた。巷の中高年男性をほのぼのとしたタッチで紹介する単行本『おじさん図鑑』(小学館)が12万部のベストセラーになった注目の人だ。

「私、洋服がキマっているおじさんは、実はあまり好きじゃないです。洋服しか自信がないのかな、と思ってしまうから。自分なりの生き方が定まっている、その人らしい味のある内面にこそ惹かれます」

 ということで中高年男性の皆さん、肩の力を抜いてジーンズを楽しむのが一番のようです。

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋