総務省の発表によると、国内の65歳以上の割合が4分の1を超えた(昨年10月現在)。2025年には、団塊の世代が75歳以上になる。介護するだけではない。いつかは介護される側になることも考えられる。どうせなら介護しやすい人になって、上手に介護されませんか? 

「70代ぐらいからでしょうか。誰かのお世話になることが、すごく苦手になっているような気がします」

 そう語るのは、僧侶の釈徹宗さん(52)だ。釈さんは大阪府池田市にある如来寺の住職で、古民家を改修したグループホーム「むつみ庵」の代表も務めている。

「今の人たちは、社会が便利になった分、人に迷惑をかけないことを美徳として生活してきました。けれども私たちもやがて介護される日が来る。人に身を任せる覚悟をどこかで持たないといけないと思うんです」

 そこで釈さんが提唱するのは、「お世話され上手」になること。いうなれば、介護される人が、上手に迷惑をかける「お世話され上手」のスキルを身につけようというのだ。

 それでは、「お世話され上手」のスキルにはどんなものがあるのだろうか。東京都内の介護施設を訪ねると、「どんな人に対しても、正しいケアを行っていかなくてはいけない介護の専門職としては、あまり考えてはいけない部分ですが、お互いにより良いケアができるヒントになれば」と前置きをした上で、スタッフおよそ15人を集めてくれた。

 そこで「お世話しやすい人はどんな人か」と聞くと、全員が口をそろえたのが「笑顔の人」だった。

「たとえば体操しましょうか、などと提案したときにニコッと笑ってくれると、楽しんでくれてるかなと思って安心します」

 
 また、誰だって「褒められる」と嬉しくなる。介護する人だって同じだ。

「お礼を言われたり、褒められたりすると、もっとやってあげたくなる」

話し方」も重要な要素だ。女性スタッフから好評なのは、「かわいらしい話し方」や「優しいしゃべり方」だった。男性スタッフからは、こんな意見も。

「『バカヤロウ』とか『やらねーよ!』とか言われても、なんかかわいらしい人っているんですよね。べらんめえ口調って、愛着がわいたりする」

 話し方の印象は、それぞれの性格や、相性によって受け取り方が変わるようだ。

「ものの頼み方」も多くの意見が出た。まとめると、「あまりに何でも要求されると『わがままだな』と思ってしまうが、遠慮されすぎても、何をやってあげていいかわからない。本当に必要なことを、適度に要求してもらえれば、気持ちよく手伝ってあげることができる」

 意外だったのが、「スキンシップされるのが好き」という女性スタッフの意見。もちろんセクハラになるような触り方はNG。挨拶するときや、話しかけるときに、ポンポンと腕などをたたいてくれるのが好きだということだった。

 また、見た目も大切だ。

「きれいな人、というのではなく、清潔感。お世話しやすさに少なからず関係してくると思います」

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋