もう一つ、NISAが活用されるために、遅れている日本の金融教育の充実が欠かせないとの声がある。FP事務所ガイア社長の中桐啓貴氏は、投資家層の充実には小さな成功体験の積み重ねが必要だと言う。

「どんな商品を買えばいいか自分では判断できない人が多い。非課税の期間をなくして利便性を高めるとともに、投資をアドバイスするアドバイザー制度を整えたり、金融教育にも力を入れたりする必要があるんです」

 日本人は、お金の話を人前ではしたがらず、金融教育も最近ようやく増えてきた程度。投信の運用会社の日興アセットマネジメントNISAセンター長の汐見拓哉氏も、次世代がグローバルな視点でのマネー感覚を養う必要性を説く。

「子どもが大手企業に就職すれば喜ぶのに、その企業の株を子どもが買うと言うと抵抗感のある親たちもいる。マネーの知識や投資の意義などが、もっと浸透しなければ投資をする人は増えないでしょう」

 安心して資産を残せる仕組みを整えること、金融教育で金融の知識を広めることが、今後、日本経済にマネーを回す力になるはずだ。

◇「NISAの制度概要」日本証券業協会の資料などをもとに編集部作成

非課税の対象:NISA口座で投資した株や投信の配当・利益
口座を作れる人:満20歳以上の国内居住者
いくらまで投資できる?:年100万円が上限
非課税になる期間は?:5年間、途中売却可
その他のポイント:損益通算は不可、開設できる口座は1人1口座まで

[現在、改正が期待されるもの]
非課税枠(NISA口座で投資できる金額)を年200万〜300万円ほどに引き上げ
非課税になる期間を段階的に延長
2016年をめどに、子ども版のNISAを創設
対象年齢の引き下げ
複数の口座開設

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋