駅前のNISAの看板 (c)朝日新聞社 @@写禁
駅前のNISAの看板 (c)朝日新聞社 @@写禁

 今年1月にスタートした個人投資家向けの税制優遇制度「NISA(少額投資非課税制度)」だが、課題が浮き彫りになっている。

 現在のNISAの口座開設数は650万(3月末時点)。口座数は右肩上がりで、前向きなニュースも多いが、実際は投資がさほど進んでいないという。投信評価会社のイボットソン・アソシエイツ・ジャパン「投資信託事情」の島田知保編集長が言う。

「口座を開いただけで、実際には投資をしていない方が多いのが実情です。NISA口座の稼働率(実際に投資されている率)は金融機関にもよるが、20~40%程度なんです」

 その理由を示すデータがある。金融庁が6月、NISA利用者の意識について、証券営業員などに対するアンケートをまとめた。それによると、NISAの利用を妨げている要因として、「NISAに対する認知度不足」とともに「仕組みが複雑でわかりにくい」ことなどがあると感じているようだ。セゾン投信の中野晴啓社長は現行のNISAは使い勝手が悪いとして、非課税期間を撤廃すべきと主張する。

「今は期間終了時に損していたら対処のしようがないんです。例えば100万円が、相場の下落で80万円に減ったとする。それをNISAではない口座で運用して元の100万円に戻しても、その20万円分は課税対象になってしまう」

 長期投資の基本には、「割安な株は必ず本来の価値になる」という考え方がある。ただし、本来の価値になるのが5年先か10年先かはわからない。

「政府が長期的投資を促すと言いながら、非課税期間を設けていること自体が本末転倒なんです」(中野社長)

 このことを表すのが米飲料大手コカ・コーラだ。現在の株価は20年前に比べて4倍。長時間をかけて投資を受け、企業の価値が評価された結果とも言える。

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