「義母は今年100歳で健在ですが、今は夫と2人の義姉、孫たちみんなで面倒を見ています。私の顔を見ると『何かうまいものはないかい?』なんて聞いてくれますが、早く診断を受けていれば、混乱せずにもっといい対応ができたかなという思いもあります」

 本人にとっても家族にとっても大きなストレスとなる受診拒否問題は、役所や地域包括支援センターなどにも相談することができる。地域に「認知症サポート医」がいれば、支援センターなどの相談にのる。認知症サポート医は05年に国が始めた制度で、かかりつけ医の相談役になったり、必要に応じて専門医につないだりして、地域連携を進める役割を担う。

 勤医協中央病院(札幌市)の名誉院長で06年から認知症サポート医として認知症患者を診る伊古田俊夫医師は、この5年間で10例ほどの「受診拒否」の相談を受けたという。

「受診を拒否した場合、ごく単純な誘導策としては、湿疹があるようだから診察を受けましょうとか、健康診断を受けましょうとか理由をつけて、医療機関に連れていく方法があります」

 たとえば、通院中の疾患があればそれを口実にしてかかりつけ医から専門医を紹介してもらったり、風邪や頭痛をきっかけに受診させて、その際に相談するのも一つの方法だ。いずれも成功の鍵は、「事前」に病院側に相談しておくことだ。

介護している家族が、『私、頭痛がひどいので病院に行きます。一緒についてきて!』と自らの受診への同伴をお願いする方法もあります。成功率は高くはありませんが、プライドの高い方を病院に誘うにはよいでしょう。これも医療機関側との事前の打ち合わせが必要です」

週刊朝日  2014年8月1日号より抜粋