電力会社も国も避難計画に責任を持たないため、結局、自治体に丸投げされることになる。鹿児島県の策定した避難計画について調べている環境経済研究所の上岡直見代表がこう語る。

「県の計画では自家用車で逃げる以外の交通手段を想定していない上、代替の輸送手段となるバスの台数もまったく足りていない。また、県が避難路として想定している道路の一部は、ハザードマップで5メートルの津波が来たら水没することになっている。原発が壊れるような津波が来たら、当然、通れなくなります」

 もっとひどいのは、介護が必要な高齢者など要援護者の避難計画だ。伊藤祐一郎・鹿児島県知事は6月、「30キロ(圏内)までの要援護者の避難計画というのは現実的ではない」と話し、10キロ圏より外の避難計画は当面策定しない考えを示した。移動が困難な要援護者は屋内退避で十分という暴論なのだが、前出の上岡氏はさらにこんな問題点を指摘する。

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