エクセルアーティストの堀内辰男さん。絵の具や画筆、キャンバスは使わない。必要なのはパソコン1台と表計算ソフトのExcel(エクセル)だ(撮影/写真部・松永卓也)
エクセルアーティストの堀内辰男さん。絵の具や画筆、キャンバスは使わない。必要なのはパソコン1台と表計算ソフトのExcel(エクセル)だ(撮影/写真部・松永卓也)
HOW TO DRAW「ちょっと工程を説明しましょうか」(堀内さん)と、慣れた手つきでマウスを操り、一輪のチューリップを描いてくれた。花びらの外枠を描いて、色を塗り、複製して3枚にする。茎と葉も同じように手際よく描いていく。完成までにかかった時間は約3分。「10年ほど前だったら5、6時間はかかった」(撮影/写真部・松永卓也)
HOW TO DRAW
「ちょっと工程を説明しましょうか」(堀内さん)と、慣れた手つきでマウスを操り、一輪のチューリップを描いてくれた。花びらの外枠を描いて、色を塗り、複製して3枚にする。茎と葉も同じように手際よく描いていく。完成までにかかった時間は約3分。「10年ほど前だったら5、6時間はかかった」(撮影/写真部・松永卓也)
HOW TO FINISH UP絵が完成しても作業は終わらないのがエクセルアート。A3判を超える大きな絵になると1枚の紙に印刷できないため、分割して印刷してから貼り合わせる。「定規を支えてもらったり、曲がってないかチェックしてもらったり、奥さんにも協力してもらう」(堀内さん)(撮影/写真部・松永卓也)
HOW TO FINISH UP
絵が完成しても作業は終わらないのがエクセルアート。A3判を超える大きな絵になると1枚の紙に印刷できないため、分割して印刷してから貼り合わせる。「定規を支えてもらったり、曲がってないかチェックしてもらったり、奥さんにも協力してもらう」(堀内さん)(撮影/写真部・松永卓也)

 なぜエクセルなのか──そう聞くと、堀内辰男さんは、「誰もやっていなかったから」と、ほほ笑みながら答える。

 医療器具や文房具などを設計するエンジニアとして働いていた堀内さんは、定年を迎えた14年前にパソコンを購入した。

「エクセルで図やグラフを描けることは知っていたので、それなら絵も描けると思った」

 電源を入れて、何もわからないまま操作し続けているうちに、線を描けること、色を塗れることがわかった。初めて描いた一輪の君子蘭には30分かかった。

 それから、ほぼ毎日、マウス片手にパソコンの画面に向き合い、2006年にはパソコン画のコンテストで大賞を受賞。いつしか、「エクセル画のパイオニア」と呼ばれるようになった。

 今後の目標は、エクセルを使いながらも、画家として評価される絵を描くこと。

 定年後に花開いたエクセルアーティストの挑戦は続く。

週刊朝日  2014年7月25日号