「だって、もし自分が子供のときに、大好きなヒーローが、『でもあれ、非日常だけどね』なんて思いながら演じていたとしたら嫌でしょ(苦笑)。やっぱり、芝居をする限りは、その役の人生をいかにリアルに生きるかが、僕らのすべきことだと思うので」

 子供の頃はどちらかというと引っ込み思案だった。今も、“目立ちたい”という気持ちはない。カッコよくなくてもいい。共感してもらえなくてもいい。ただ、作品の中で、何かひとつ、人を惹きつけるものを、手に入れたいと思っている。

「前に、蜷川(幸雄)さんの舞台の稽古を見学させていただいたときに、蜷川さんが、『この戯曲つまんないからさ、何とか面白くしようとしてるんだよね』っておっしゃっていたんです。別に本当に蜷川さんがその戯曲をつまらないと感じているわけじゃなくて、『伝わりにくいものを、どうやったら伝えられるか考えている』って意味なんだろうな、って僕は解釈して。伝えることにこだわっている姿勢が素晴らしいなと思いました。人が心を動かすのって、美しさとか強さだけじゃないですよね。愚かさとか醜さとか哀しさ……。人を惹きつける何かを、一つの作品ごとに、僕も手に入れたいと思う」

 蜷川幸雄さんが演出を手がけ、出演者が全員男性という舞台「ロミオとジュリエット」で、菅田さんは主人公のロミオを演じる。

「今回は、ちょっと奇抜な企画ですけど、誰よりも自由にやりたいです。俳優の仕事の面白いところは、思いもかけない人との出会いがあって、それによって自分が変わっていくことだったりするから」

 そう話す瞳には、鋭い光と翳りの両方が宿っていた。

週刊朝日  2014年7月25日号