子どもを自然に妊娠、出産して「そろそろ二人目を」と考えたがなかなかできない……。こうした二人目不妊が増え、全不妊患者の約3割を占めると言われている。また、一人目が自然妊娠であるだけに、病院を受診するまでに時間がかかる傾向がある。

 大阪市に住む青木佳織さん(仮名・36歳)は、4年前に一人目の子どもを自然妊娠し、出産した。子どもが2歳になり夫婦で「そろそろ二人目を」と話し合ったが、なかなか妊娠しない。1年が経ち、青木さんは近くの婦人科を受診した。すると左右の卵管が狭くなっているため自然妊娠しにくいことを告げられ、卵管を使わずに妊娠できる体外受精をすすめられた。

 体外受精は、採取した卵子と精子を体外で受精させ、できた受精卵を子宮内に戻す治療だ。ただし排卵誘発剤の使用や、腟から針を挿入して採卵するなど身体的な負担が大きい。さらに自費診療のため、体外受精1回で40万円前後かかる。

 治療に踏み切れずにいた青木さんは、不妊治療専門施設の英(はなぶさ)ウィメンズクリニックを受診した。そこで、子宮に造影剤を注入したのち、X線撮影で卵管の状態を調べる卵管造影検査を受けた。すると左の卵管が狭くなっていて(卵管狭窄)、右の卵管はふさがった状態(卵管閉塞)だった。

 青木さんを診た院長の苔口(こけぐち)昭次医師はこう話す。

「二人目不妊で当院を受診した方の不妊原因を調べたところ、卵管に問題があった方が最も多く、50%でした。この割合は一人目不妊よりも多く、もともと軽度であった卵管の異常が進行して二人目不妊になっている可能性が考えられます」

 
 卵管は卵巣から排卵した卵子が子宮に到達する通り道であると同時に、射精された精子が子宮から卵管へと進んで受精し、受精卵が育つ場所でもある。卵管の異常とは主に狭窄や閉塞のことで、卵子や精子が通りにくくなることなどから妊娠しにくい。

 青木さんはその後、通水検査を受けた。卵管に生理食塩水を注入し、水圧の変化を観察することで卵管の詰まり具合を調べる検査だ。

「卵管造影検査や通水検査をすると、3~4カ月以内に妊娠する人が少なくありません。卵管内を造影剤や生理食塩水が流れることにより、精子が通りやすくなると考えられています。このため、狭窄程度の通過障害なら、卵管造影検査や通水検査だけで3カ月ほど様子を見ます」(苔口医師)

 青木さんはこれらの検査を受けても妊娠しなかった。そこで苔口医師にすすめられたのが「卵管鏡下卵管形成術(FT)」だ。内視鏡を内蔵したカテーテルを腟から子宮、卵管へと挿入し、カテーテルの先端についたバルーン(風船)をふくらませて、詰まっていたり狭くなっていたりする部分を広げる。静脈麻酔をして実施し、手術は15分程度で終了、入院の必要はない。術後は痛みが出ても1、2時間程度でおさまる。

 卵管は内径が1ミリ程度の細い管なので、まれにカテーテルが卵管を傷つけ、穴があくこともあるが、自然に治り、妊娠に影響は出ない。つまり身体的負担やリスクが少ない手術といえる。

 
 さらに手術は健康保険が使え、費用は約30万円だ。高額療養費制度の申請をすれば約20万円が戻り、自己負担が10万円程度となる例もある。重度の卵管水腫(卵管内に分泌液が貯留する病気)がある人や過去に子宮外妊娠をした人は、手術を受けられないこともある。

 卵管鏡下卵管形成術で卵管の通過障害が改善するのは約8割だ。同クリニックでこの手術を受けた852例を調べたところ、29.7%が妊娠した。この割合は1回の体外受精で妊娠する人と同程度だ。また、妊娠した人の約9割が術後6カ月以内で妊娠している。青木さんも術後6カ月で妊娠、無事に第2子を出産した。この方法は体外受精に比べて身体的、金銭的な負担が軽い。そして自然妊娠を望めることが最大の利点といえる。ただし、術後の自然妊娠率は年齢が上がるほど低く、38歳になると20%程度になる。このため同クリニックでは、37、38歳以上になると体外受精を第一選択としてすすめる。

「年齢が低いほど治療の選択肢が増え、自然妊娠を望めます。一人目を自然に授かった方も二人目ができなければなるべく早く専門施設を受診することをおすすめします」(同)

 卵管鏡下卵管形成術は、操作に技術や経験が必要なため、実施施設が少ない。実施していない施設を受診した場合、青木さんのように最初から体外受精をすすめられることもある。卵管に異常がある場合の治療の選択肢は体外受精だけではないことを知っておきたい。

週刊朝日  2014年7月25日号