男子プロゴルフツアーの前座に参加した西武元監督の東尾修氏は、球界の活気を取り戻すヒントがあったとこう語る。

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 久しぶりに楽しい前夜祭とプロアマだった。7月3日から4日間行われた男子プロゴルフツアーの「セガサミーカップ」の前座にお邪魔してきた。1日の前夜祭、2日のプロアマと、最近の男子の試合はスポンサー離れも続いていると聞いていたから、選手の危機感や必死さも伝わってきて、感じるものがあったよ。

 前夜祭では、池田勇太選手会長の、スポンサーへの感謝と「いい試合をしよう」という心のこもったあいさつに胸が熱くなった。石川遼、松山英樹が久々のそろい踏み。近くでイケメン2人の技術を見られる、またとない機会となった。

 ゴルフ界ではここ10年近く、女子の活況が続いている。宮里藍がプロデビューして以来、10代、20代前半の若手が毎年のように台頭し、好成績を残している。スポンサー回りや、大会前に開催されるプロアマ戦などで、身近さをアピールする努力も成功の秘訣だ。年間試合数も男子より多い。15歳のツアー優勝なんてニュースもあって、話題性も十分。賞金女王が男子の賞金王の獲得賞金を上回るなんて年もあるくらいだ。

 野球界でも「カープ女子」という言葉が全国区になったように、女性ファンが多くなって野球場の雰囲気が変わった。女性用のレプリカユニホームも発売され、華やかさは増したよね。各球団も努力している。女性限定のイベント開催などもそうだ。人気は、現場の選手たちの活躍と球団の取り組みなど、球界全体が一体となって実現されるものなのだと感じるよね。

 
 球界の活性化には、もう一つの要素を考えなければいけない。それは、スター選手の海外流出をどう防ぐかだ。力のある人間は、よりレベルの高い世界で戦いたくなる。でも、レベルだけではない。メジャーリーグの天然芝のにおい、球場全体の雰囲気、天気によって左右される試合……。野茂英雄から始まって、そんなところに憧れて海を渡った選手は多い。年俸が何十倍にも跳ね上がることだけが理由じゃないよ。

 球界も、一段上のことを考える必要がある。天然芝だった頃の球場の雰囲気づくりだよね。子どもがグラブを持って球場に来る。選手がそれを見つけて、スリーアウトになった時にボールを渡してあげる。そんな選手との距離感を近づける方策も一つだろう。女性ファンを意識して、洗練された空気ばかりを追い求めると野球少年が入りづらくなる。プレーしている選手も何を感じているかな。これまで以上に、現場とフロントが一体となって考える時が来ていると思う。

 メジャーリーグは、スポンサーとの付き合いも密接だ。試合のない休日には監督や選手がパーティーに足を運ぶ。スポンサーのため、松坂大輔はレッドソックス時代に1日平均50枚以上のサインを球団から頼まれていた。現場のスポンサーへの意識は、メジャーリーグが上だと感じる。スポンサーもより力を入れてくれるようになる。

 隆盛にある他の競技、苦境にある競技の取り組みから学べることもたくさんある。男子プロゴルフも今、必死に活性化への努力を続けている。2020年には東京で五輪が開催される。野球も競技復活の可能性が残されているのだから、もっと盛り上がらないと。

 私も球界のOBとして、スポーツ界の「今」をさらに知りたいと思っている。

週刊朝日  2014年7月18日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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