文筆家の北原みのり氏が、お見合い結婚した知人の性生活について、こんな話を聞いたという。

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 結婚して1年経つというのに、一度も夫とセックスしていない、という知人がいる。相手は、お見合いで知り合った40代男性。

「もしかして、ゲイ?」

 と考えた彼女は、同性愛がテーマの映画などを一緒に見たり、同性婚について話したりなど色々とやってみたが、全く興味がない様子。下着に凝ってみたり、キスしてみたり、手を絡めてみたりなどやってみるが、彼はキスされるだけ、手を絡められるだけで、全く無反応。1年間、そんな調子で色々と頑張ったあげく、彼女は結論を出した。

「童貞なんですよ、きっと」

 そう考えると全て説明がつくのだ、と。一人っ子で、母親から溺愛され、勉強は得意で、誰もが知る大学に行き、高収入の職業で、プライドは山のように高い。そんな彼が、彼よりも経験値が高そうにみえる妻とのセックスにもし失敗したら……と考えると、怖くて怖くてたまらないのではないか、と。聞けば、それまでつきあってきた女性は一人もいないらしく、お見合いも母親からせかされて、受動的にやってきたらしい。

 
 その場で話を聞いていた女たちは多少パニックになりながら、本当は凄く特殊な性欲の持ち主なんじゃない? または全く性欲がないとか? 世の中には、Aセクシュアルと呼ばれて、性欲が全くない人たちもいるよ! などと口々に叫んだ。すると、「性欲は、あります」と彼女は断言するのである。

「私が寝た(と夫が思った)後に、ネット見てオナニーしてるんですよ」

 ……正直、おえ、と思った。マザコンで40過ぎた童貞で妻が寝静まった後にオナニーかよ! しかし、その後の話はもっと凄かった。いったい何を見てオナニーしているのか確かめたくて、翌日彼女は彼のパソコンで履歴を探ったという。すると検索ワードに入っていたのが……「おっぱい」であった。……おっぱい……。

 40代高学歴高収入既婚者童貞の検索ワード、「おっぱい」。童貞をこじらせ続けた男の不幸というか、そんな男と結婚してしまった女の悲惨というべきか。

 私たちは彼女の不幸を労いつつ、男という生き物の不思議に笑い続けた。

週刊朝日  2014年7月18日号