信頼していたのに裏切られたこの関係者は怒りが収まらない。

「善意の寄付を懐に入れられてしまっては組織の信用にも関わる。会の世話人たちからは、刑事告発も辞さずとの意見も出ています」(同)

 震災後に発足した市民団体の子ども福島は、地元の子供たちを放射線から守るための活動に意欲的に取り組んでいた。いままでの累積活動資金は約5千万円。そのほとんどは、企業や団体からの寄付だ。

 本誌は、Y氏の多重請求の証拠となる領収書を入手した。宛名空欄の領収書を用意し、カラーコピーをアースデイに提出。その後、原本を子ども福島に提出していたのだ。こうして二重請求ができてしまった。

 一度の移動にかかった新幹線代金を、三つの組織から別々に受領していたケースもあった。

 アースデイからの精算金は、Y氏の個人口座に振り込まれていた。このため、子ども福島は不正に気づくのが遅れたという。

 別の関係者が語る。

「他の保養プロジェクトなどに要した経費として、Y氏へは総額120万円以上を支払い済み。ですが、領収書紛失などを理由に請求し、わかっているだけでも34万円を着服していたのです」

 子ども福島ではY氏の不正を追及するために経費の再監査を行い、第三者委員会を立ち上げた。今後、返還請求をしていく方針だ。本人の弁明を聞こうとしたが、本誌の取材に対してY氏は、「お答えすることはありません」とだけ話した。

 被災地には義援金など多額の寄付が流れ込む。福島県の職員によると、発覚したケースは氷山の一角に過ぎないという。支援金がどう使われているのか、チェックする必要がある。

週刊朝日  2014年7月18日号より抜粋