「眠れる森の美女」といえば、ディズニー・クラシック・アニメーションの傑作のひとつ。今回、アンジェリーナ・ジョリー主演で実写化された「マレフィセント」は、オーロラ姫に“永遠の眠り”の呪いをかけた“邪悪な妖精”マレフィセントの視点で、物語が描かれる。その、吹き替え版のエンディングで流れる主題歌「ONCE UPON A DREAM~いつか夢で~」を歌っているのが女優の大竹しのぶさんだ。

「前から知っているメロディーではあったんですけど、今回は、これまであった英語詞とはまったく違う日本語の歌詞がつけられています。監督さんからは、『一人の子供がそこにいるイメージで、囁くように歌ってほしい』というリクエストがあって……。でも映画を観たら、この日本語の歌詞の意味がすごくすんなりと、自分の中に入ってきたんです」

 アニメ版では、オーロラ姫とフィリップ王子によって歌われる曲が、「マレフィセント」では、母性溢れる子守唄に生まれ変わった。そこで、母性をイメージしながら歌ったという大竹さんに、「母性とは何だと思いますか?」と訊ねてみた。

「母性は、子供を産んだ人だけにあるものではないと思う。誰もが持っている、人を愛することや慈しむこと、許すこともそうだし、幸せであるよう願うこととか……。そんな、自分以外のものに向けるエネルギーのことのような気がします。でも一番強いのは“守ること”かな。自分が強くないと、人って守れないじゃないですか。だから、母性は“強さ”にもつながるんでしょうね」

 
 大竹さんという女優は、その表現によって、いつも何か驚きを与えてくれる存在だ。でも、本人は、目標や計画を立てて、それを達成しようと頑張ったことは一度もないという。

「今も、60歳になったらどうしようとか、70歳になったら……とか、そういうことは考えないです。過去を振り返って反省することもあまりしないし、ダメですね(苦笑)。『こうしたら人にどう見られるだろう』とかあまり考えず、やりたいか、やりたくないかだけで、今までやってきたので。頑張ったあとに、『どうしてこうなっちゃったんだろう……?』ってなることもたまにはありますけど、そういうときは、これもきっと何かの修業なんだな、って思うようにしています」

 現在は、舞台「抜目のない未亡人」の真っ最中。意外にも、三谷幸喜さんとはこれが初タッグだ。

「三谷さんは、私がお芝居に対してストイックで、厳しい人だと思っていたみたい。でも、実際はダラダラしてたので、拍子抜けしたんじゃないでしょうか(笑)。テーマとか難しいこととか何も考えず、観終わった後、『あー、楽しかった!』と思っていただけたら。お客さんを楽しませようと必死になっている自分たちが面白くて仕方がないです(笑)」

週刊朝日  2014年7月11日号