スケッチブックの紙2枚と鉛筆だけで立体を表現するアーティストがいる。奇妙なイラストに命が吹き込まれる(撮影/写真部・東川哲也)
スケッチブックの紙2枚と鉛筆だけで立体を表現するアーティストがいる。奇妙なイラストに命が吹き込まれる(撮影/写真部・東川哲也)

「絵が飛び出して見えたらおもしろいだろうなぁと思って」

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 和歌山県在住のアーティスト、永井秀幸さん(23)が描く、スケッチブックと鉛筆によるシンプルな3Dアートが今、国内外で注目を集めている。

 ネットの動画サイトに自ら投稿した制作風景の映像から火がつき、日本のテレビ番組や海外の雑誌などで紹介された。今年4月、映画「アメイジング・スパイダーマン2」の公開時には、宣伝を担当する広告会社からスパイダーマンの3Dイラストを描いてくれと頼まれるまでに。

 イラストは独学。動画サイトにあがっている、海外の路上に描かれたトリックアートなどを参考にしたというが、その完成度は高い。永井さんが作品を描き始めたのは、3年前。当時、大学で福祉を学んでいたが、「自分の進む道はこれではない」と感じ、大学を辞めて、もともと好きだった絵を描き始めた。

 制作時間は早いもので1日。気分がのると無心に5、6時間は描き続けている。立体に見える箇所から描き始めるのがポイント。写真に撮って作品は初めて完成となり、最も立体に見える位置は作品によって異なる。

 現在、永井さんはJR和歌山駅からほど近い場所に位置するぶらくり丁商店街にある一室を借りて、高さ180センチほどのベニヤ板2枚を使った大作に取り組んでいる。10月に商店街で開催されるイベントに出展するためだ。未完成だが、もうすでに飛び出して見えるから驚き。

 一人の若者が、和歌山の自宅の一室から発信する3Dアートの世界。今後どのような変化を遂げるか楽しみだ。

週刊朝日  2014年7月11日号