昨年夏、参院選で初当選を果たした藤巻健史氏。通常国会が終了した今、予想よりも大変だったと振り返った。

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 参議院決算委員会の金子委員長は、普段は飄々とされているのに、場が荒れると冷静沈着に取り仕切るので私は尊敬している。その金子委員長が6月9日の全閣僚出席の締めくくり総括質疑でミスった。

 冒頭の委員長としての質疑で「厳しい財政赤字」に言及されたのは、現実認識の観点からして素晴らしかったのだが、残念ながらミスった。「国の累積赤字が1兆円台を超え」(正しくは1千兆円を超えた)と桁を間違えられたのだ。後でご自身で修正されたが、それでも私は、「決算委員長として、数字に対する感覚がなさすぎる」と冷笑したのだった。

 その日、帰宅したら、週刊朝日の編集者の常冨さんからメールが来ていた。

「来週号(6月27日号)の原稿で、日銀が異次元の量的緩和を続ける例として、『たとえば6カ月間で30億円』とありましたが、額が小さすぎませんか?」。テヘ~、まずい。慌てて返信した。「すみません。『30兆円』の間違いでした。元トレーダーとして、金融・経済のプロとして、数字に対する感覚がなさすぎました。お恥ずかしい限りです」

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 通常国会が6月22日をもって閉会した。いや~、くたびれた。全国比例選出で、地元も、後援会も、しがらみも「な~んにもない」私は、ご接待(?)のない分、他の先生方より、よほど楽だと思っていた。しかし違った。

 
 まずは参議院の定員は、衆議院の半分なのに審議すべき法案の数は、当然のことながら同じだ。しかも私が所属しているのは、参議院は(分党前まで)たった9人の少数野党。さらに私はその中で3番目に若いのだ。質問時の差し替えを含め、いろいろな仕事が回ってくる。

 臨時国会、通常国会を通じて1年間で、計39回・711分(11時間51分)も質問時間をいただいた。質問は政府へのチェック機能であり、野党議員の見せ場である。その点で非常にやりがいがあるのだが、くたびれたのも確かだ。専門分野は別として、その他の分野はABCから学ばなければならず、質問作りは1日仕事だからだ。

 衆議院議員選挙は、参議院より半年早く行われているので、衆議院の1年生議員は通常国会を我々より1回多く経験している。その衆議院の自民党1年生議員が「議員になって1年半、初めての質問なので緊張しています」と言っているのを聞いた。確かに、自民党の衆議院1年生議員の質問回数は今までで1回か2回が普通のようなのだ。大人数世帯だし、野党に質問時間が厚く配分されるせいだ。

 本会議・委員会は質問だけではない。当然のことながら他議員の質疑を聞いていなければならない。決算委員会、文教科学委員会など、午前10時から午後5時か6時までの1日コースが多かった。ず~っと座っていると腰が痛くなる。そのほか、党の政策調査会の役員会、法案ごとの朝の勉強会、議員同士の懇親会や連絡会議。今国会では弟・幸夫へのお見舞い、そして葬儀。分党騒ぎも加わった。

 64歳の私、過労死をしなくてよかった。申し訳ないですが、休会中はゆっくり休みます!!!(なお週刊朝日の執筆は数少ない楽しくやっている仕事ですから休会中も、もちろん続けます)

週刊朝日  2014年7月11日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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