「100年先まで年金は安心」──。政府はそう言うが、果たして本当だろうか。専門家に聞くと、年金財政はすでに危機的状況にあり、1962年生まれ以降の人は、支払う保険料のほうが、もらえる年金よりも多くなるという。最大の問題は「少子高齢化による世代間格差」だ。

 1970年代は現役世代10人で65歳以上の高齢者1人を支えていたのが、現在は3人に1人。2040年には現役1.5人で1人の高齢者を支えることになり、さらに将来的には1人で1人を担ぐ状況で、高齢者を支える人が圧倒的に足りない。生涯受け取れる年金の総額にも大きな差が生じる。

 学習院大学経済学部の鈴木亘教授の試算によると、1940年生まれの人が平均寿命まで生きると、納付した保険料よりも、3170万円多く年金を受け取れる計算になるという。50年生まれでプラス1030万円、60年生まれはプラス40万円。ところが、61年でプラスマイナスゼロになり、それ以降の生まれの人は支払った保険料のほうが、もらえる年金よりも多くなる。2010年生まれの人は2550万円の負担増になる。

「今、生まれた子供が、何もしていないのにすでに2500万円以上もの負担を強いられているのが、年金の現状なのです。同様の損得計算はかつて、内閣府や厚労省も出していました。しかし、若者の間に年金不信が広がるという理由で、次第に結果を公表しなくなりました」(同)

 
 政府は保険料収入を増やすために、国民年金の未納者を加入させようと、15年10月から、受給資格期間を現在の25年から10年に短縮する。また、16年10月からはパートやアルバイトなど短時間で働く労働者にも週20時間の労働時間で厚生年金に加入できるようにするなど、年金制度改革は行っているが、いずれも保険料収入は少ない上、将来的に受給者を増やしてしまうので財政的には無意味である。

「格差を是正するために、基礎年金を全額税方式に移行するなど、制度を抜本的に変えるしか生き残る道はありません」(同)

 国民年金の財源にはすでに、税金が2分の1投入されている。残りを消費税に切り替えると、毎月1万5250円の保険料がゼロになるので、差し引きの家計の負担はむしろ少なくなると鈴木教授は言う。

 自分が受給開始年齢に達したときにいくらもらえるのか。はっきりしないので、老後の人生設計が立てられない。それが、現役世代が最も不安になっている原因でもある。

 政治の怠慢のツケはまた国民に回ってくるのだ。

週刊朝日  2014年7月11日号より抜粋