セクハラ野次に失言と、続く政治家たち。作家の室井佑月氏は「許されていいのか?」と怒りを露わにする。

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 6月18日に開かれた東京都議会の本会議で、晩産化について質問したみんなの党の塩村議員に、

「お前が早く結婚すればいいじゃないか」

「産めないのか」

 そんな酷いヤジが飛んだらしい。議場は笑いに包まれ、舛添知事もニヤリとしていたって。この人、信用ならないね。だって、働く女の地位の向上などをうったえていなかった?

 表向きと内心は違うってところか。ほかの議員のオッサンもだよ。誰一人として、

「今の発言はセクハラだ」

 そういってヤジを制止しなかった。笑ってたんでしょ、みんな。ってことは、その場ではそれが悪いことってわからなかったのか。

 それとも、巷にはびこるいじめの構造と一緒で、ただまわりの空気に同調していたのか。どっちにしても、みなさん、議員という仕事は向いていないと思う。こういう人たちを税金で食わせているのかと思うと腹が立つ。

 ヤジを飛ばされた塩村議員は議席に戻って、ハンカチで涙をぬぐっていたみたいだ。

 あなたもさ、なぜいい返さない。巷ではもっと酷いセクハラが問題になっているんだよ。女性の代弁者として議員になったのなら、そんなに弱くてどうする。いい返してやればよかったんだ。

「おなじことを、小池百合子先生にいってみてください。首相の奥様にも、子どもを産めっていってください」って。

 
 あなたにヤジを飛ばした男は、絶対に自分より強い人間にはなにもいえない。そんな卑怯な男に負けてどうする? セクハラはなくならないではないか。

 ま、こっちの問題は都議会にたくさんクレームの投書が来ているみたいだから、卑劣なヤジを飛ばした男は処罰されるんだろう。

 じゃ、こっちはどうか。除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設をめぐる福島県側との交渉について、石原伸晃環境相が、

「最後は金目でしょ」

 そう発言した。

 金目とは聞いたことがない言葉だが、つまりこの男は、「福島県の人間は、補償金をつり上げるためゴネてるだけだ」っていったんだ。被害者に対し、酷い中傷だ。

 石原氏は「お金ですべてを解決する意図では全くない」と弁明していたけど、ほかにどんな意味があるっていうのさ。

 この件について、野党各党は不信任決議案、問責決議案をそれぞれ共同提出したが、衆参両院とも与党が多数を占めていて、いずれも否決された。

 こんな重大な、しかも環境相を務める人間の暴言が許されていいのか?

 てか、永田町では、どうも許されるみたいなんだけど。あたしたち国民は、忘れちゃならないし、許してもいけないと思う。放射能汚染問題を、福島県の人々だけの問題にしちゃいけない。

週刊朝日 2014年7月11日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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