唯一の宿泊施設「休暇村 大久野島」前の広場は一番のうさぎ密集地(撮影/写真部・松永卓也)
唯一の宿泊施設「休暇村 大久野島」前の広場は一番のうさぎ密集地(撮影/写真部・松永卓也)

“うさぎ島”こと大久野島は、広島県竹原市沖の周囲4.3キロほどの小さな島、住民はいない。1929年から45年まで、旧日本陸軍の毒ガス製造工場などがあり、「地図から消された島」だった。そんな負のイメージを払拭したのが、うさぎだ。

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 実は、この島に、もともとうさぎはいない。71年、島外の小学校で飼いきれなくなった8羽が放たれ、繁殖。現在、700羽以上になっている。

 日が落ち、薄暗くなってきたころ。浴衣を着崩した男性が大量の餌を手に、うさぎと戯れている。記者がその様子を眺めていると、英語で話しかけられた。

「(大久野島は)私の国でも知られています。来るのは2回目です」とシンガポール出身のトムさん。一人で来たという。翌日の早朝、島を離れる前にも名残惜しそうにうさぎを見つめていた。

「外国人観光客が増えています。中国や台湾が多いですが、ドイツやオーストラリアからも来られます」と話すのは、「休暇村大久野島」の門脇広和さん(44)。ネットなどでも話題となり、2013年の来島者数は、なんと約10万人にのぼるという。

 世界の人々を癒やしているらしいうさぎだが、こんな一面も。初めは近寄ってくるものの、餌を持っていないとわかると次第に遠ざかる。こちらから、しつこく近寄ると、オシッコをひっかけられた……。意外とうさぎは現金だった。

週刊朝日  2014年7月4日号