「売れるから置かない」。現在、新雑誌創刊に向けて準備している堀江貴文氏はその言葉を聞いて、本や雑誌を売るためには、やはり営業努力が必要なことを痛感したという。

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 書籍を出すにあたって著者のPRに頼る体質というのは以前よりも強くなっている気がしている。だから出版社はマスメディアだけでなく、ソーシャルメディアでも影響力がある人の出版物を作りたがる傾向になる。

 出版したあとにPRしてくれたり、サイン会や講演会などのイベントの告知もしてくれたりするからだ。以前は新聞や雑誌に広告を入れたり営業マンが書店などにせっせと足を運んで営業したりしていたのを、ネット・スマホ経由で著者にやらせているようなものである。

 実際のところ、アマゾンなどのランキングはツイッターやフェイスブックの影響が大きいと思う。つまり著者側の稼働がかなり求められる時代になってきているのだ。そういった、いわば空中戦で売れていく本というのは、本屋さんのスペースで平積みにされなかったりすることがある。私は『ゼロ』の販促で全国の書店を行脚したが、その時に、とある駅ナカ書店の店長から驚くべき話を聞いてしまって愕然としたことがある。

 いわく、「堀江さんの本は売れるから置かないんですよ」と。一瞬耳を疑ってしまった。売れるから置かないってどういうことだ? 詳しく話を聞くと、こういうことだった。私の場合、ツイッターやフェイスブックなどで出版期日などを私自身が拡散するので、購入したい人は事前に情報を知っていて、通勤通学の途中に書店があるので、そこで配本日に指名買いをする人が多いのだそうだ。

 つまり、平積みしてなくとも自動的に売れていくということである。

「売れるから置かない」とはそういうことだった。

 
 書店にすれば、限られた陳列スペースにどんな本を置くのかは経営効率から考えても重要な話である。放っておいても売れる本をわざわざ置くことはない。一般向けというよりは固定の読者に向けて売れる本だと書店側も判断しているのだろう。

 拙著『ゼロ』の場合は、熱心に営業マンと私が営業したので、多くの書店で平積みにしてもらったが、営業しなかったらどうなっていたかわからない。おそらく今までと同じような対応をされて、平積みされなかったかもしれない。

 実は、これまでに出した初版2、3万部の本で、最終的に10万部近く売れた本もあまり書店で見かけることがなかった。あったとしても平積みにはされていなかった。その理由がわかって非常に複雑な気持ちになったのも事実である。

 いくら著者がソーシャルメディアで熱心にPRしても、営業をきっちりやらないと、書店では平積みにしてくれないケースがあるのである。だから今回のムック雑誌プロジェクトは、書店でできるだけ目立つ場所に置かれるような企画を考えている。

 表紙の体裁にもこだわりたい。思わず店頭で手にとってくれそうな感じにすれば、書店も話題性という意味で優先的に扱ってくれるのではないかと考えている。そのような工夫を一つひとつ積み重ねていくことが大事なのである。

週刊朝日  2014年7月4日号