全米オープンゴルフ選手権での日本勢の残念な結果に対して、プロゴルファーの丸山茂樹氏はこういう。

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 今季の海外メジャー第2戦、全米オープンゴルフ選手権(6月12~15日、米ノースカロライナ州のパインハースト・リゾート)は、29歳のマルティン・カイマー(ドイツ)が通算9アンダーで圧勝しました。

 初日からのトップを守り抜き、2位に8打差をつけたんですから、圧勝というか完勝というか。

 カイマーは2010年に全米プロ選手権でメジャー初優勝して、翌11年には世界ランキング1位にも立った人です。12、13年とツアー優勝がなかったんですけど、今年5月に「準メジャー」格のプレーヤーズ選手権で勝って自信を取り戻したみたいですね。

 今回はコースマネジメントに徹しきったのが勝因でしょう。追ってくる中にビッグネームがいなかったのも大きいです。「あのメンバーじゃ、ここまで追い上げて来られないだろう」って思えればラクですから。

 
 今回は全米オープンで初めて、ラフをなくして、荒れた砂地に草を生やしたエリアが設けられました。USGA(全米ゴルフ協会)によると、昔のゴルフ場に戻すというコンセプトみたいなんですけど、1人とはいえ、9アンダーを出されてしまったということは、USGAの負けでしょう。彼らは優勝スコアをイーブンパー前後と仮定して、セットアップしますからね。

 今大会の前々週に米PGAツアー初優勝を飾った松山英樹は8オーバーの35位でした。初日は6位だったんですけど、ズルズルといっちゃいましたね。

 スイングがちょっとずつズレていったように見えました。まあ、これは誰にでも起こりうること。気になったのは、コースマネジメントの部分です。全米オープンでは、普段の米ツアーより一段上のコースマネジメントが必要になります。英樹は警戒心を持ったり、攻撃的になったり、メリハリをつけるべきだったと思う。とくに「守り」が下手だった気がします。

 最終日の1番パー4で、英樹はダブルボギーをたたきました。2打目をグリーン右に外し、3、4打目と続けて、お椀(わん)を逆さにした形状のグリーンの傾斜に負けて、球が元の位置へ戻ってしまった。試合後のコメントが気になりました。

 
「1番はショット、アプローチとも悪くなかったけど……」と。いや、2打目は右でなく、左を狙うべきだった。いいショットなのにああなったって思ってるんだったら、僕は受け取り方が違うと思います。

 それにしても英樹以外の日本勢はふがいなかった。宮里聖志(きよし)が最下位の156位、矢野東(あずま)が155位で予選落ち。谷口徹さんは3日目に18オーバーと大崩れして、予選通過者では最下位の67位でした。

 いやぁー、もう何をしていいか分からなくなったんでしょうね。聖志は初日のティーショットで一度しかフェアウエーを外さなかったのに、11オーバーでしたからね。

 日本でやってる分には、どこに打って、どうしてこうして、というコースマネジメントが、そんなに必要ないんです。コースが簡単だから。だから現状、日本でゴルフをし続けているうちは、きちんとしたマネジメントの習得はできない。日本ツアーに重大な問題を突きつけた全米オープンでもありました。

週刊朝日  2014年7月4日号

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丸山茂樹

丸山茂樹

丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。

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