荒木:なるほどな。アハハハ。

林:それにしてもデビューして40年、まったく過激さが衰えないって、すごいですよ。

荒木:「エロを忘れるな」って人妻やってるのと、あとは共同通信で報道っぽいものをやってるのよ。両方やってないとダメなんだ。

林:共同通信ではどんなのを撮ってるんですか。

荒木:たとえば不良がいて、卒業式はどんな格好でもいいって学校があると聞くと行くわけ。こういうのを受け入れる校長が世の中にはいるわけよ。そこにも載ってるよ。

林:(写真集をめくって)あ、これですね……。報道写真っぽくなくて、なんか不穏な、ザワザワッとした感じの写真ですね。

荒木:写真見てザワめかないのは、おもしろくないもんな。

林:どうして同じカメラでこんなに違うんでしょうね。なに撮っても、明るくなるべきものがならないという。ほら、この運動会の写真だって、ふつうだったらかわいいって感じになるのに、ならないですよね。なんの細工もしてないのに。

荒木:そりゃー、しょうがない。写真の神様がついてるから(笑)。でもアタシは、ここに来るついでに撮った写真がいちばんいとおしい。そっちのほうがアタシの思ってる写真に近いんだよ。自分が移動してる記録。死への移動。生活とか、生きていることが写真ですから。「写真イコール人生」って言ってるしね。今回の写真展で確信したよ。「イケてる」って。「俺も頂上まで行っちゃったかもしれないな」って自分で言ってるの。

週刊朝日  2014年6月27日号より抜粋