本人はもちろん、介護する家族にも負担のかかる認知症。まだまだ介護なんて関係ないといっても40~50歳代と比較的若い段階で発症する人もいる。では、ケアが必要になったらどうすればいいのか。認知症介護研究・研修東京センター研究部部長の永田久美子氏に聞いた。

Q1 「認知症かもしれない」と思ったらどう行動を起こしたらいいのでしょうか。

 まず、ふだん診てもらっている「かかりつけ医」に受診し、心配な点を具体的に相談しましょう。認知症の検査や診断、投薬などの治療をしてくれる「かかりつけ医」が増えています。

 より詳しい検査が必要な場合は、かかりつけ医が専門の医療機関を紹介する流れになっています。かかりつけ医がいない場合は、各市区町村に必ずある「地域包括支援センター」に電話をして、「物忘れ外来」など認知症に詳しい地域の医療機関を教えてもらいましょう。各都道府県には、より専門的な診断や治療を行うための「認知症疾患医療センター」が設置されて、かかりつけ医や地域包括支援センターと連携を図っています。こうした医療機関をホームページに掲載している都道府県や市区町村もあります。

 地域包括支援センターにはケアマネジャー、保健師、社会福祉士などが常駐し、介護のよろず相談を受けています。悩みを抱え込まないで、これからの生活について最初の段階でよく話し合い、支えてくれる地域のサービスや支え手の情報を知っておくことが肝心です。

Q2 嫌がる本人をどうやって連れていったらいいのでしょうか。

 早めに受診させようと周りが急ぐと、本人の不安や不満を募らせ、ますます頑なになり、悪循環に陥りがちです。本人が病院に行ってみようという気になる誘い文句の工夫が必要です。「お互い元気でいられるように一緒に健診にいこうよ」「これからもあの好きなこと続けられるといいね」など、前向きな声をかけましょう。お孫さんや友達から誘ってもらう手もあります。地域包括支援センターの職員に家庭訪問を依頼して、在宅訪問の医師を紹介してもらい、家に診にきてもらう方法もあります。

Q3 普段の生活で困ったことがあったらどこに相談すればいいのでしょうか。

 まずは地域包括支援センターです。そこで、家族の集いや最近できている「物忘れカフェ」など、気軽に相談できる場や人を紹介してもらいましょう。地域の民生委員の中には、認知症の相談に乗ってくれる人も増えています。面と向かっては話しづらいという場合、電話相談が便利です。認知症の専門ダイヤルを設置する自治体が増えたので、役所で聞いたり、市区町村の広報やホームページで確認をしましょう。

 介護体験のある人が親身に相談を受ける「認知症の人と家族の会」の電話相談もあります。地域には必ずいい相談相手がいます。一人で抱え込まないことが大事です。

Q4 使える介護サービスはどのようなものがありますか。

 認知症の人はいきなり何もかもできなくなるわけではなく、介護サービスが必要になるのは、長い経過の中盤以降です。最初のころは介護よりも、本人が閉じこもらずに安心して外に出かけられるような場所や支援者が必要です。最近では各市区町村で支援者や場所づくりが進んできているので、地域包括支援センターに問い合わせ、地元情報を集めてみましょう。

 一方、家族が疲弊しないように、早めに介護保険サービスを申請し、お任せではなく本人・家族の生活や素朴な希望を伝えながら活用しましょう。

週刊朝日  2014年6月27日号より抜粋