藤田宜永(ふじた・よしなが)1950年、福井県生まれ。早稲田大学文学部中退後、パリに渡る。帰国後、エッセーを執筆。86年、『野望のラビリンス』で小説家デビュー。95年、『鋼鉄の騎士』で日本推理作家協会賞受賞。96年に『巴里からの遺言』、97年に『樹下の想い』が直木賞候補となる。99年、『求愛』で島清恋愛文学賞受賞。2001年、『愛の領分』で直木賞受賞。近著に『銀座 千と一の物語』(文藝春秋)、『女系の総督』(講談社)がある(撮影/写真部・植田真紗美)
藤田宜永(ふじた・よしなが)
1950年、福井県生まれ。早稲田大学文学部中退後、パリに渡る。帰国後、エッセーを執筆。86年、『野望のラビリンス』で小説家デビュー。95年、『鋼鉄の騎士』で日本推理作家協会賞受賞。96年に『巴里からの遺言』、97年に『樹下の想い』が直木賞候補となる。99年、『求愛』で島清恋愛文学賞受賞。2001年、『愛の領分』で直木賞受賞。近著に『銀座 千と一の物語』(文藝春秋)、『女系の総督』(講談社)がある(撮影/写真部・植田真紗美)
藤田宜永さん(左)と林真理子さん(撮影/写真部・植田真紗美)
藤田宜永さん(左)と林真理子さん(撮影/写真部・植田真紗美)

「文壇一のおしゃべり」を自称する、作家の藤田宜永さん。新刊の『女系の総督』では、家族小説に挑戦。同じく作家の林真理子さんとの対談で、自身の「夫」論を明かした。

*  *  *
林:帯には「古き良きホームドラマの復活」ってありますね。何か大きな事件があるわけじゃなく、500ページも読ませるって、さすがですよ。

藤田:ありがとうございます。手前みそですけど、俺ってこんな本も書けたんだというのが、すごくうれしいんですよ。出来がどうこうじゃなくて。60歳を超えて、よくも悪くもやさしくなったというか。若いころは、昨日と今日で言ってることが違う女性を見ると、腹が立っていたワケです。最近は、もう笑えるようになりましたね。「わかった、わかった。なんとかしてあげるよ」と(笑)。

林:やさしい~。

藤田:やさしいというか、飼いならされたというか。

林:この小説のお父さん、娘を見守る視線がこまやかでやさしいですね。藤田さん、お子さんがいないのに、よくお書きになれたなと。もちろん、それが作家なんですが。

藤田:自然に書けたんですよね。僕は実母と関係がよくなくて、そういう小説はいっぱい書いてきたんですが、これは自分が女性を見ている視点で書いたんです。男って“旦那スタイル”で生きるか、“ホストスタイル”で生きるか、どちらかだと思うんですが、僕はホストスタイルなんです。「ついてこい」じゃなくて、「大丈夫?」と。カミさんの愚痴も、最近は黙って聞けるようになりましたよ。

林:やさしいですよ。奥さんの愚痴を聞いてあげるなんて。

藤田:女の人の愚痴って、答えを出しちゃいけないでしょう? ときどき「おまえだっていけないよ、それは」って言ってしまうと、「もうやめた!」と言われちゃう。林さんのところはどうですか。

林:うちはめんどくさいから、話しませんよ。うるさいんですよ、土日に講演を入れると怒ったり。

藤田:以前お会いしたときの感じでは、すごく温厚そうな方に見えましたが。で、土日に仕事、入れるんですか、入れないんですか。

林:だからもう入れませんよ。

藤田:意外と従順ですね。うちのカミさんだったら、反発して月まで飛んでっちゃいますよ(笑)。「なんで私があなたのために土日に家にいなきゃいけないの?」って。

週刊朝日  2014年6月20日号より抜粋